(AERA 2021年10月25日号より)
(AERA 2021年10月25日号より)

 ワクチン接種を済ませていても油断はできない。期待されるのは、感染リスクが高い人の重症化するのを防ぐ治療薬だ。高い効果が報告されているが、課題もある。AERA 2021年10月25日号から。

【写真】宿泊療養施設を視察する岸田首相

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 新型コロナウイルスの感染が落ち着き、日常生活が再開されつつある。だが、日本より先にワクチン接種が進んだ英国やシンガポールではブレークスルー感染が起き、まれに重症化する人も出ている。そんな中、期待されるのは、重症化を防ぐ薬だ。

 最初に登場したのは7月19日に特例承認された「ロナプリーブ」。臨床試験(治験)では、リスクの高い人が重症化するのを防ぐ効果が7割あった。厚生労働省によると9月21日までに2万5555人に投与された。

 米リジェネロンが開発し、中外製薬が販売する。新型コロナウイルスのたんぱく質の活性を抑える(中和する)抗体の中から特に中和活性の高い2種類の中和抗体を組み合わせた「抗体カクテル療法」だ。

 どちらの中和抗体も新型コロナウイルスの表面にある突起状のたんぱく質の、ヒトの細胞と結合する部位に対する抗体で、ウイルスの増殖を抑え、重症化を防ぐとみられている。

 国内では点滴による投与しか承認されていないが、米国では皮下注射も承認されている。静脈に直接、投与する点滴よりも、皮下注射の方がゆっくりと薬剤が体内に吸収され、副作用が起きにくいと考えられている。原則として入院や医師の往診が必要な点滴に対し、外来で打てるというメリットもある。

■感染初期に投与の必要

 9月27日には、軽症者を対象にした2番目の治療薬「ゼビュディ」が特例承認された。英グラクソ・スミスクラインと米ベンチャー企業ヴィア・バイオテクノロジーが開発した。ロナプリーブ同様、ウイルスの突起状のたんぱく質のヒトの細胞と結合する部位に対する中和抗体だ。ただし、こちらは1種類の中和抗体を使う。

 臨床試験では、持病があるなど重症化リスクの高い人の入院や死亡を79%減らす効果があった。米国では5月に緊急使用許可が出た。これも点滴投与だ。

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