――2015年「FINEBOYS専属モデルオーディション」でグランプリを獲得、芸能界に入った。翌年、俳優デビューし、順調にキャリアを重ねてきた。今年は「教場II」「直ちゃんは小学三年生」「東京怪奇酒」「僕の姉ちゃん」など話題作に次々に出演した。だが、昨年までは「楽しい、という感覚とは別のところにいた」という。
人と関わることが大好きだから、最初からこの仕事が楽しくはあったんです。でも、プロの俳優として芝居について考えたり、演じること自体を楽しむ気持ちは、置いてけぼりにしてきたところがあります。それより、他の同世代の俳優にオーディションで負けたくないという気持ちが先行していました。
それが変わったのは、コロナ禍の自粛期間がきっかけです。最初の緊急事態宣言で、すべての仕事が2カ月ほどストップしたとき、初めて自分がすごく疲れていることに気づいたんです。
正直に言うと、以前は有名になりたいとか、お金がほしいという思いも原動力になっていた。でも、そもそも物欲がそんなにないんです。「負けたくない」を原動力にして走ってきたけど、それだけだと疲弊しちゃうんですよね。そういうことにも気づく時間を作ってこなかったんだなって。仕事が再開するのも、少し嫌でした。せっかく休んでリセットされて優しい気持ちになったのに、また「負けたくない」に戻るのかと……。この仕事をやりたいのか、いっそほかのアルバイトでもやろうかとも考えました。
でも、すぐにそれは嫌だと思い直した(笑)。だったら、もっとこの仕事を楽しめるように向き合おう。そのために何をするか考えようと変わったんです。
■取り組み方が変わった
――緊急事態宣言が明けてすぐ、映画「東京リベンジャーズ」の撮影があった。主人公タケミチ(北村匠海)がタイムリープするトリガー、物語のカギとなるナオトを演じたが、以前とは明らかに違う感触があった。
1年くらいかけて撮影してきたんですが、撮影がストップする前は、大勢いる中でどうやったらナオトの存在感を出せるのかを考えていた。だけど、撮影を再開したら、そんな思いは消えていて、「なんでこの人はこんなに怒ってるんだろう?」とか、台本を読み込んでいろいろな角度から考えていく方に、自然と興味が切り替わっていきました。取り組み方が変わると、見えることも変わる。その感覚が今も続いている感じです。