山口:政権が中央集権化された感じがありますよね。権力を批判し、奪い取るという反主流派の居場所をなくしているように思います。今回の石破茂さんを巡る状況の変化を見ても自民党には大きな危機が訪れています。

池上:逆らうとこういう目に遭うということを見せつけたというか。異論を言い出せなくなりますよね。小選挙区制度の導入は政権交代のハードルを下げるためのものでした。その意味でも、本来の小選挙区制度を有効に生かすためには、野党が強くなり、勢力が伯仲していくことが必要です。

(左から)山口二郎(やまぐち・じろう)1958年、岡山県生まれ。法政大学法学部教授(政治学)。近著に『民主主義は終わるのか』、共著に『異形の政権 菅義偉の正体』など(写真:本人提供)/池上彰(いけがみ・あきら)1950年、長野県生まれ。ジャーナリスト。近著に『知らないと恥をかく世界の大問題12』、共著に『いまこそ「社会主義」』など(写真:片山菜緒子)
(左から)山口二郎(やまぐち・じろう)1958年、岡山県生まれ。法政大学法学部教授(政治学)。近著に『民主主義は終わるのか』、共著に『異形の政権 菅義偉の正体』など(写真:本人提供)/池上彰(いけがみ・あきら)1950年、長野県生まれ。ジャーナリスト。近著に『知らないと恥をかく世界の大問題12』、共著に『いまこそ「社会主義」』など(写真:片山菜緒子)

山口:緊迫した戦いというイメージが広がれば、関心を持つ人が増え、野党への支持は上がります。8月の横浜市長選では、自民党が支援した候補者が無名の新人に大勝を許しました。

池上:テレビなどで政治の話をしていると、「どうして国民が総理大臣を選べないんですか」というコメントが視聴者からよく届きます。建前としては「議院内閣制ですから」「10月の選挙であなたも選ぶチャンスがありますよ」と言いたい。でも、それはきれいごとすぎるところがあるでしょう。

山口:選挙区で野党が割れてしまえば、漁夫の利を占めるのは自民党です。野党の使命は、候補者を一本化して二者択一の構図を作ること。そうすれば、岸田政権の本格的な継続か政権交代か、二つの道が開けます。国民が総理や政権を選ぶという構図が生まれれば、それは09年以来の快挙です。

池上:誰もが選択できるのが選挙と言えるだけの力を野党が持たなければダメですね。

(構成/編集部・福井しほ)

AERA 2021年10月18日号より抜粋