9月中旬、リトルイタリーで開かれたサン・ジェナーロ祭。ワクチン接種済みの人はマスクをしなくても良いため、通常に戻ったようなにぎわいだ(筆者撮影)
9月中旬、リトルイタリーで開かれたサン・ジェナーロ祭。ワクチン接種済みの人はマスクをしなくても良いため、通常に戻ったようなにぎわいだ(筆者撮影)

 新型コロナウイルスのワクチン接種証明義務化が進むアメリカ。接種を拒否する社員の大規模な解雇が行われたほか、飲食店などには接種証明なしには入ることができないなど、生活に大きな影響を与えている。そんな中で接種を拒否する人々の胸には、政治への反発があるようだ。AERA 2021年10月11日号で取材した。

【写真】店先にはワクチン・パスポートが必要であることを知らせるポスターが一斉に貼り出された…

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 ニューヨーク市内で自宅勤務するエンジニアのイアン・パラデス(33)は、喘息が持病であるため、ワクチンに関する情報を注意深くみてきた。ニューヨーク市内では9月24日から、65歳以上の市民と持病がある成人が、ファイザーの3回目の接種(ブースター)を受けられることになり、パラデスは即日接種を受けた。

「現時点でワクチンを受けていない米国民は、政治的に抗議する意思を込めて拒否していると思う」

 とパラデスは分析する。

■賛成と反対で真っ二つ治安悪化の原因にも

 歴史的には、感染症に対するワクチンの開発は心待ちにされ、教育現場でははしかなどのワクチンを義務化してきた。しかし、深刻な経済危機まで引き起こした新型コロナのワクチンだけなぜこれほどまでに抵抗があるのか。それは、保守とリベラルの間にある政治的信条による分断が背景にある。

 新型コロナが米国で広がり始めたのち、トランプ前大統領は、新型コロナについて「アンダー・コントロールだ」「すぐに消える」「インフルエンザのようなものだ」と、深刻な事態とは異なる発言を続けた。自らが感染したのちも「コロナのニュースに市民はうんざりしている」とし、今年9月に入ってからは、ブースターの接種を受けない意向さえ示している。

 同時に、保守派に根強いトランプ支持者の間では、ワクチンに関する陰謀論が広まった。「ワクチンこそがコロナ感染を広げている」「超小型チップが体に入れられ、マイクロソフトに行動を監視される」といった誤った情報が、ソーシャルメディアを通して現在も広まっている。

 ニュージャージー州のラジオDJ、ジョー・イリザリに9月11日、米同時多発テロから20年経った世界貿易センターの追悼式典で出会った。義理の弟が崩壊したツインタワーで勤務しており、命を落とした。しかし、「米国は20年経って良い方向に向かっているか」と尋ねると、

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