日本初の女性総理となった妻の奮闘を、夫の視点で描く原田マハの小説『総理の夫』。映画化にあたり、夫婦を演じた中谷美紀と田中圭が語り合ったのは、日本の未来だった。AERA 2021年10月4日号に掲載された記事を紹介する。
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——9月23日から公開中の映画「総理の夫」で、日本初の女性総理となる相馬凛子を演じたのは中谷美紀(45)。夫・相馬日和を演じたのは田中圭(37)。映画では13年ぶりの共演となった。
田中圭(以下、田中):前の現場では、それほどお話しできなかったのですが、今回はカメラの回ってないところでも、たくさんお話しできましたよね。
中谷美紀(以下、中谷):圭くんはとても空気の読める方なので、私も含めて現場に居る方も楽な気持ちでいられました。
田中:僕は、中谷さんの意外な一面をいっぱい知ることができました。中谷さんのいないところで「美紀ちゃん」と言うぐらいには知った気になっています。
中谷:嘘、絶対に言ってないでしょう(笑)。
田中:中谷さん、一回、僕が持っていたささみを取ったじゃないですか。
中谷:いただきましたね。メイクさんがダイエットしていらしたので、ちょうどいいと思って「一つ、いただけますか」と。
田中:僕、そのやりとりが結構楽しくて。中谷さんにささみを取られたって、面白いですよ。
中谷:そんなに言うなら、ささみ、お返ししますよ(笑)。
——映画では、凛子は働く女性が子どもを産み育てやすい社会の実現のために奔走。日和は、総理となった妻との生活に戸惑いながらも懸命に凛子を支えていく。
■自分も犠牲にしない
田中:日和はただ巻き込まれていくだけ。周りのキャラクターも強烈だし、僕はそこにいればいいなと思って演じていましたが、凛子は違いますよね。
中谷:役作りとして、ドイツのメルケル首相が国民に対して直接語りかけるふるまいや、声の抑揚などは参考にしました。とりわけ、リーダーたるものアンガーマネジメントが大事だと思いますので、何か憤りを覚えたり、改善しなくてはならないときに、ただ声を張り上げるだけでは相手の心には届かない。公の場で無礼なふるまいをされても平然としている態度は、とても参考になりました。