大空幸星(おおぞら・こうき)/1998年生まれ、慶応義塾大学4年。昨年3月、望まない孤独の根絶を目的にNPO法人「あなたのいばしょ」を設立 (c)朝日新聞社
大空幸星(おおぞら・こうき)/1998年生まれ、慶応義塾大学4年。昨年3月、望まない孤独の根絶を目的にNPO法人「あなたのいばしょ」を設立 (c)朝日新聞社

 コロナ禍で人とつながりが希薄になり、孤独が問題視されている。孤独は自ら命を絶つことにもつながるだけに、対策は急を要する。新首相に求める政策は何か。AERA 2021年10月4日号は、NPO法人「あなたのいばしょ」の大空幸星理事長に聞いた。

【写真】岐阜市の支部会合でリモートであいさつする野田氏

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 日本では、孤独は個人の問題とされてきました。しかし、社会問題に広げる必要があります。昨年末、僕は政府に、担当大臣の設置や調査・研究の推進を求める「孤独対策」を提言しました。すると今年2月、菅義偉首相は内閣官房に孤独・孤立対策担当室を新設し、孤独・孤立対策担当大臣を任命しました。孤独担当大臣はイギリスに次いで世界で2例目。これについてはかなり評価しています。

 昨年3月に僕が立ち上げたNPO法人「あなたのいばしょ」は24時間年中無休で、インターネットを利用したチャット相談を受け付けています。相談は増える一方で、特にここ数カ月で増えています。今は1日1千件近い相談が寄せられます。

 相談が増えた一因に、新型コロナウイルスがあるのは間違いないと思います。長引く外出自粛で他人との接点が減り、「望まない孤独」を感じている人が増えています。望まない孤独は、ときに自ら命を絶つまでに人を追い詰めます。

 今回、自民党総裁選に立候補した4人の政策集などを見る限り、「自殺」という2文字が入っていたのは岸田文雄さんだけでした。その点は率直に評価したいと思いますが、子どもの分野に限っています。

 孤独と自殺は全世代にわたるメンタルヘルスの問題です。そこに取り組むと明言した候補者は、残念ながらいません。

 日本の政治家が孤独対策に言及しないのは、孤独への関心が相対的に低く、よくわかっていないのが本当のところだと思います。だからそこは民間の力を活用してほしい。民間には僕たちを含め孤独の専門家はいっぱいいて、具体的な提案を持っています。僕たちの声を聞いて政策に落とし込んでいただきたい。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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