「感染や重症化の低年齢化と医療の逼迫(ひっぱく)で、いざというときに入院できない可能性があるので、看護師である妻と長男と3人で話し合って決めました」

 9月上旬に、学校から児童が感染したとメールが届いた。「やっぱり危惧していたとおりになった」と思った。

 長男が通う都内の小学校ではタブレットとWi‐Fiに接続する機器が各児童に配布されたが、授業のオンライン配信などはない。そのため、戸村さんは仕事の量を減らし、長男の勉強を見ている。スマホの効果音アプリを活用してクイズ形式で問題を出すなど、工夫を凝らす。家の手伝いや学区内を歩いて避難ルートを確認するなど、国語や算数以外の学びも意識する。戸村さんは言う。

「息子の思いに合わせて工夫しながら家庭内でも教育を継続し、息子も楽しんでくれています。ただ、友だちとの関わりがなく、自主休校が長期になればストレスのケアも必要になる。いつ登校を再開させようかと悩み続けています」

■オンライン授業で出席

 自主休校は原則、感染が不安で登校しない場合は「欠席」ではなく「出席停止」扱いとなる。文部科学省が昨年6月、通知を出した。だが、例外的に「出席」とする自治体もある。本市では、授業のライブ配信などを受ければ「出席」になる。同市の遠藤洋路教育長は言う。

「今までは学校に来て学ぶことだけが学校教育とされてきましたが、コロナを機に常識が打ち砕かれ、学びの選択肢が増えました。学校の外からも授業に参加できる環境が整えば、登校することだけが出席ではなくなります」

 同市はかつてICT整備率が全国最低レベルだったが、2016年4月の熊本地震後に学校のICT化を推進。昨年は、全国一斉休校の時点で3人に1台の端末を各校に導入していた。それらを家庭にパソコンやスマホなどがない児童生徒に貸与し、4月半ばから全公立小中学校でオンライン授業を実施した。

「最初は決まった時間にあいさつし、健康観察をすることから始まりました。子どもたちが学校とのつながりを保てたことが大きかった」(遠藤教育長)

 現在は熊本市だけでなく、全国ほとんどの小中学校でオンライン学習の環境は整っている。国のGIGA(ギガ)スクール構想で、1人1台の端末が配布されているからだ。だが、自主休校の子どもたちへの対応は自治体や学校ごとに異なっている。

 教育学者の末冨芳・日本大学教授(教育行政学)は言う。

「オンライン授業への対応は自治体間格差が大きく、保護者と子どもの不安も引き起こしています。子どもたちの学びを保障し、つながりを守るために、できることから始めることが必要です」

(編集部・深澤友紀)

AERA 2021年10月4日号より抜粋