谷口真由美(たにぐち・まゆみ)/大阪芸術大学客員准教授。専門は国際人権法、ジェンダー法。著書に『日本国憲法~大阪おばちゃん語訳~』など (c)Natsuki Yasuda
谷口真由美(たにぐち・まゆみ)/大阪芸術大学客員准教授。専門は国際人権法、ジェンダー法。著書に『日本国憲法~大阪おばちゃん語訳~』など (c)Natsuki Yasuda

 自民党総裁の座を巡り、4氏が熾烈な戦いを繰り広げている。コロナ禍であぶり出された日本の問題に向き合うには、何が必要か。AERA 2021年10月4日号で、法学者の谷口真由美さんが語る。

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 私がフェイスブック内のグループとして「全日本おばちゃん党」を立ち上げたのは、2012年9月。きっかけは当時与党だった民主党の代表選挙と自民党の総裁選でした。あのときの候補は男性だけ。なんで政治の顔におばちゃんがいないの?と書き込みました。

 9年経って、候補者の半分が女性に。もちろん政治信条はそれぞれで、女性だから応援するということではありませんが、大きな時代の流れとしてジェンダー的な視点では望ましい方向に進んできたのだと思います。一方で、女性候補ばかり連れ合いのことをことさらに持ち出されたり、容姿に関して言及されたり、並べられ方にまだ非対称性が見受けられるのも事実です。

 政治の世界は、女性としてわきまえてだけいては生き延びられない世界です。自分がやりたいことを持つ強さと、マイノリティーを経験しているからこそのアンテナの高さ、角度の広さが2人にはあるはず。  今回は、平時ではなく非常時の総裁です。火中の栗を拾いに行くようなものなのに、Youは何しに総裁へ?と思いますよね。モリカケサクラも、国民は納得していません。清算せずに前に進んではいけない対象がたくさんあって、それは具体的な人物として、まだ巨大な影響力を持って存在している。安倍・菅政治をどう評価し乗り越えていくか。次のリーダーにはそこをビジョンとして見せてほしい。

 私は、常々「思考停止ワード」と呼んで注意してる言葉があるんです。普通、当たり前、常識、一般的、伝統、みんな言ってる、昔から。「なんで空は青いの?」という質問に「そんなもん昔っからや」という大人は要注意。「なんでやろな、習ったことあるけど忘れてしもたな」って一緒に疑問を持って調べてくれる人が、対話できる人です。ジェンダーの話はまさにそう。この言葉に注意しながら総裁選を見てたら面白いですよ。女系天皇の話で、河野(太郎)さん、岸田(文雄)さん、高市(早苗)さんは「伝統」という言葉を使いました。

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