藤井は主催する菓子メーカー不二家からサプライズでペコちゃんのぬいぐるみを贈られ、「この後、おうちに飾れたら」と笑顔を見せた (c)朝日新聞社
藤井は主催する菓子メーカー不二家からサプライズでペコちゃんのぬいぐるみを贈られ、「この後、おうちに飾れたら」と笑顔を見せた (c)朝日新聞社

 豊島将之叡王(31)を下し、史上最年少三冠を達成した藤井聡太王位・棋聖。いよいよ「藤井時代」の到来となるのか。AERA 2021年9月27日号の記事を紹介する。

【図】竜王戦の日程は?

*  *  *

 今年度、藤井は棋聖戦五番勝負で渡辺明名人(37)を挑戦者に迎えて3勝0敗で防衛。王位戦七番勝負は豊島挑戦者に4勝1敗で防衛。そして叡王戦で挑戦し、豊島叡王に3勝2敗で奪取した。藤井の快挙を伝える報道では「藤井時代」というフレーズが多く見られた。

 現在の将棋界の席次1位は名人・棋王・王将を保持する渡辺。次いで2位は名人とともに別格のタイトルである竜王を保持する豊島。王位・叡王・棋聖の三冠となった藤井は3位だ。

 藤井が今夏、上位2人を圧倒した点を見れば、実質的に藤井時代の幕は開いているとも言える。一方で時期尚早と言う人もいるだろう。序列を重視すれば、藤井は依然3位のままである。

 輝ける一時代を築いた谷川浩司九段(59)はAERA本誌7月5日号の記事で、将棋界の第一人者を次のように定義している。

「(別格の)竜王か名人、どちらかを持った上で、タイトル四つは必要と考えます」

 この定義はおそらく妥当だろう。藤井時代到来と言い切るのは、谷川が示す条件が満たされたときでよさそうだ。

■竜王戦でも豊島に挑戦

 10月に開幕する竜王戦七番勝負でも、藤井が豊島に挑戦する。もし藤井が竜王位を獲得すれば史上最年少四冠。さらには席次1位となり、名実ともに藤井時代が始まる。豊島と藤井は王位戦と叡王戦で合わせて10局戦って、豊島3勝、藤井7勝という星が残された。叡王戦閉幕後、豊島は次のように語った。

「強い棋士(藤井)と指して課題がたくさん見えてきましたし、勉強になった10局だったかな、というふうに思います。(竜王戦まで)短期間で修正できるところをして、1カ月準備をしてがんばりたいと思います」

 両者の通算の対戦成績は豊島9勝、藤井8勝で依然豊島が勝ち越している。豊島の巻き返しが見られる可能性もあるだろう。

著者プロフィールを見る
松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

松本博文の記事一覧はこちら
次のページ