大谷翔平は9月10日のアストロズ戦で、44号本塁打を放った。試合後の会見では、本塁打王への意欲も口にした(写真:gettyimages)
大谷翔平は9月10日のアストロズ戦で、44号本塁打を放った。試合後の会見では、本塁打王への意欲も口にした(写真:gettyimages)

 大リーグ・エンゼルスの大谷翔平が日本人初の本塁打王に向けて大接戦を演じている。投手としても活躍。三冠王がかかっているブルージェイズのウラジーミル・ゲレロ(22)や、アメリカン・リーグの捕手で史上初の40号を超えたロイヤルズのサルバドール・ペレス(31)ら手強いライバルはいるが、無冠に終わったとしてもMVP(最優秀選手)の最有力候補だ。AERA 2021年9月27日号の記事を紹介する。

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 ゲレロも三冠王を獲得すればMVPの有力候補。だが、大谷が本塁打王を逃したとしても「最有力候補」という見方は米国メディアの間で少なくない。

 その理由として、打撃と共に投手としてのパフォーマンスが挙げられる。今季21試合登板で9勝2敗、防御率3.36。1918年にベーブ・ルースが達成して以来、103年ぶりの「2桁勝利と2桁本塁打」に王手をかけ、内容も春先よりはるかに改善されている。4月は13回3分の2で15四死球、5月は22回3分の2で14四死球だったが、7月は20回で2四死球、8月は25回で3四死球と制球力が良くなっている。

 日本ハムから大谷を見てきた記者はある驚きを口にする。

「右ひじのトミー・ジョン手術(靱帯(じんたい)再建手術)を受けて3年近くが経ち、腕の振りが体になじんだのもありますが、テイクバックが昨年までと若干変わっていることもあります。今までは左足を上げた後に後ろに引く右腕の動きが大きかった。でも、今年はコンパクトになっている。テイクバックを変えることは投球フォームを崩す恐れがあり、簡単に踏み切れることではありません。ところが、大谷はさらなる進化を目指してフォーム改造に踏み切りました」

■制球力を改善して好投

「球種も直球、フォークを主体にした組み立てから、6月以降はスプリット、スライダーの配分が増えて打者を打ち取る引き出しが増えました。大きなイメージチェンジに打者は面食らっていると思います。直球の球速は以前より少し抑え目で150キロ台前半ですが、制球力が良いので大崩れしない。ピンチでトップギアに入ると160キロ近い球で抑え込む。『勝てる投手』に変化しています」

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