日米首脳会談後の共同会見に臨む菅首相(左)とバイデン大統領/4月16日、ワシントンのホワイトハウス (c)朝日新聞社
日米首脳会談後の共同会見に臨む菅首相(左)とバイデン大統領/4月16日、ワシントンのホワイトハウス (c)朝日新聞社

 菅政権は外交・安保分野からは「空白の1年」と指摘されている。だが、首相が毎年代わる時代に戻れば、中国やロシアの動きが懸念されるという。AERA 2021年9月13日号では、自民党総裁選後の各国との外交を予想した。

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 菅義偉首相が3日、自民党総裁選に立候補しない考えを明らかにした。菅政権は1年で幕を下ろすことになった。米国や中国、韓国などの主要メディアは一斉に、このニュースを速報した。菅首相の動きを外交・安全保障分野から眺めれば、「空白の1年」と言うべきものだった。そして、米国など友好国が恐れているのは、第1次安倍政権から民主党政権まで続いた「混乱の時代」の再来だ。

 菅首相は在任中、新型コロナウイルス対策に追われたことも重なり、外交や安全保障にほとんど興味を示さなかった。

 典型が3月から4月に至る日米協議だった。3月の外務・防衛閣僚会合(2プラス2)や、4月のワシントンでの首脳会談での共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性」が盛り込まれた。

 複数の日米関係筋によれば、米国側の希望もあったものの、「これ以上、単独では中国の台湾に対する野心を抑え込めない」という日本外務省の計算が強く働いたという。日本の安全保障を巡る重大な分岐点だったが、首相官邸はまったく関心を示さなかった。

 首相官邸は日米首脳会談の開催に強い意欲を示したが、官邸から漏れてくるのは「会談で支持率がどのくらい上がるのか」という声ばかり。会談の終了後、官邸が台湾や東シナ海などを巡る政策について指示を飛ばすこともなかった。今年の後半に開かれる2回目の日米2プラス2への関心も示さないままだった。

 ホワイトハウスの周辺では4月の日米首脳会談前後くらいまでは、「われわれには日本がいる」という声が盛んに聞かれた。対中政策で一番頼りになる同盟国という位置づけだった。だが、「のれんに腕押し」状態で、徐々に空気が冷めていったという。

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