※写真はイメージです(gettyimages)
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 コロナの感染対策で頻繁に聞く「会食禁止」。だが、人々の心に響かない。なぜか? 「会食」というオフィシャルな言葉に、そんなのカンケーねーという心理が働く。AERA 2021年9月6日号から。

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「会食はずっとしていません」

 そう自信満々に話すのは、関西地方に住む女性(63)だ。緊急事態宣言が出ている間は自宅で食事をし、職場で昼食をとるときも一人黙食を心がける。

 だが、1カ月ほど前にワクチンを打ちに行った帰り、近所に住む友人と喫茶店で2時間以上おしゃべりを楽しんだという。これが、コロナ禍でさんざんやめるように言われている「会食」にあたるとは思ってもいない。

「一般人は『会食』なんて使わない。4人以上でお酒を飲んだら会食……いや、それは飲み会かなぁ。会食はコロナ禍で出てきた言葉だと思います」

■そもそも定義は何?

 新型コロナウイルスの感染を広げる要素の一つとして、幾度となく耳にしてきた「会食」という言葉。だが、その言葉が与えるイメージは、どこかオフィシャルな食事会。だからこそ、まさか友人とお茶をしたり路上で飲食したりすることが「会食」に当たるとは思わない、という人が少なからずいるのだ。

「一緒に過ごす相手が、よく知っている人かそうでないかが会食の線引き。ビジネス上の会合は会食に含まれると思います」

 東京・新橋のSL広場で友人と路上飲みをしていた20代男性は、会食の定義をそう説明する。コロナ禍が始まってからは、会食どころか飲み屋にもめっきり行かなくなった。換気を意識して、外で飲むのだという。

「そもそも会食って何? 政治家の飲み会は会食だけど、友達と高級寿司に行くことはありません。ユーチューバーが31人で飲み会をして騒動になりましたが、あれは会食なのかな」

 会食を辞書でひくと、「何人かの人が寄り集まって、いっしょに飲食すること」とある。コロナ感染防止においては、もちろん複数人で飲食することすべてを指し、家族や同居者以外との会食を控えるよう幾度となく伝えられてきた。だが、その意味がなかなか伝わっていない。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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「会食」に認識のズレ