新学期が始まると、子どもの自殺が増える傾向にある。特に今年は長引くコロナ禍で、いつも以上に注意が必要といわれる ※写真はイメージです(GettyImages)
新学期が始まると、子どもの自殺が増える傾向にある。特に今年は長引くコロナ禍で、いつも以上に注意が必要といわれる ※写真はイメージです(GettyImages)
子どものための主な相談窓口(AERA 2021年9月6日号より)
子どものための主な相談窓口(AERA 2021年9月6日号より)

 コロナの感染拡大が続く中、子どもの自殺が急増している。貧困の深刻化やストレスの増加も背景にあるとみられる。新学期がスタートする今、特に注意すべき点は何か。AERA 2021年9月6日号から。

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「しんどい」

 神奈川県に住む40代の女性は先日、中学1年の娘が夕食時に漏らしたこの言葉を聞いてドキリとした。

 どうしたのと聞くと、コロナによって息苦しい毎日が続き、嫌になっているのだという。

 コロナ禍の1年半、娘の生活は一変した。一斉休校にオンライン授業。遠足、運動会、家族旅行など、楽しみにしていたイベントはなくなった。自宅にこもり、友だちとも会えない。

 いつまで我慢すればいいの、と聞かれて女性は「コロナ禍だからもう少し」と話したが、大人ですら息苦しい日々は、子どもに相当のストレスを与えているのだろうと思う。しばらく様子を見たいという女性は言う。

「子どもの自殺が増えているというニュースをよく聞くので、娘がどんな悩みを抱えているか心配です」

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、子どもの自殺が急増している。文部科学省などによれば、昨年の小中高生の自殺者数は499人と前年度から100人増え、統計が残る1980年以降、最多となった。小学生が前年より6人増え14人、中学生は34人増の146人、高校生は60人増の339人。

 原因・動機を見ると、「進路に関する悩み」(55人)、「学業不振」(52人)が前年同様に上位を占める。

 だが、注目すべきは、「親子関係の不和」が42人(前年比12人増)、「うつ病の悩み・影響」が33人(前年比13人増)など、家庭問題や精神疾患の影響による自殺が増えた点だ。

■ハイリスクな子が増加

 18歳以下を対象に電話とオンラインチャットで相談に乗る「チャイルドライン」を運営するNPO法人「チャイルドライン支援センター」によれば、今年に入って家庭の悩みが増加しているという。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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