桃やバナナなどフルーツの「皮」はskinとpeel、「種」はseedとpitという言い方があります。違いはなんでしょう?(画像/筆者提供)
桃やバナナなどフルーツの「皮」はskinとpeel、「種」はseedとpitという言い方があります。違いはなんでしょう?(画像/筆者提供)

 桃がおいしい季節ですね。皆さんは桃の皮ってむいて食べますか、それとも皮ごと食べますか? わたしはむいて食べるものと思って35年間生きてきたんですが、夫は皮なしで食べるなんて桃への冒涜だといいます。夫婦で皮を食すか否か激論を交わしていたところ、5歳の娘がそんなことはどうでもいいとばかりに議論を遮り、こんな質問をぶつけてきました。

「桃の皮は英語で『skin』っていうでしょ。でもバナナの皮は『peel』だよね。日本語ではどっちも『皮』なのに、なんで?」

 娘の発言は正しくは事実と異なり、少なくともアメリカではバナナの皮は「skin」とも「peel」ともいいます。でも二者がどのように使い分けられているかというと、わたしはもちろん英語が母国語の夫もしっかり答えられませんでした。そこで複数の辞書、英語ネイティブへの質問サイトなどを調べたところ、次の2点のことがいえそうだとわかりました。

1, 主にpeelは皮をむく前、skinはむいた後の状態を指すことが多い
2, でも厳密に使い分けられているわけではない

 厳密な使い分けの定義はないので、英語ネイティブの間でもいろいろ見解が分かれていました。アメリカ、イギリス、オーストラリア間でも違うし、同じアメリカ人の中でも違う意見がありました。またskinとpeelのほかに、レモンやオレンジなど柑橘系フルーツの皮を削って料理に使うときは「zest」、スイカやメロンなど分厚くて食べることができない皮は「rind」という単語もあることが指摘されており、わたしと夫はそういえばそうだったとうなずきながら、日本語では「皮」だけで済む表現が英語では多岐にわたることの面白さに感慨を覚えていました。

 それから夫が、「皮もだけど、フルーツの中身にも言い方がいくつかあるよ」と娘に説明しだしました。日本語では「種」とひっくるめて表すものを、英語では「pit(米)/stone(英)」または「seed(米)/pip(英)」と二種類に分けるのです。こちらはskin・peelと違って使い分けの定義があり、pit/stoneはフルーツの中心にひとつだけある堅い核に包まれた大きな種、seed/pipはそれ以外の小さな種のことを指します。だからアメリカでは桃の種はpit、バナナの種はseedと別の言い方をするんだよという夫の説明を聞いて、娘は目を丸くしていました。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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娘の疑問から“自由研究”