新型コロナ危機の次は、治安の悪化が米市民の生活を脅かしている。トランプ前大統領支持者の勢いも増し、「分断」がさらに深まり、社会不安は収まっていない。AERA 2021年8月2日号から。
【写真】ワシントンのホワイトハウス前で売られている「トランプ2024」のキャップ
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「10代男子がブルックリンで銃で撃たれた」「銃を持った男性が、誕生日パーティーを襲う」
スマートフォンには日々、銃に絡む犯罪の速報が入ってくる。
ニューヨーク州のクオモ知事は昨年3月7日に発令した新型コロナウイルスに絡む緊急事態宣言を今年6月24日、1年3カ月ぶりに解除した。しかし、直後の7月6日、今度は銃犯罪について同州として初となる緊急事態宣言を発表する羽目となった。
■全米で増える発砲事件
「銃に絡む問題をも解決しなければ、新型コロナの危機から真に自由で安全となったとは言えない」
と同知事。銃犯罪は、主に黒人や貧困層の市民が標的にされやすく、新型コロナで最も打撃を受けたマイノリティー層と一致しているためだ。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、2020年は19年の約2倍となる1500件の銃発砲事件がニューヨーク市内であった。21年はさらに速いペースで増加し、7月4日の独立記念日までに765件の事件があり、886人が撃たれた。
この傾向は全米でも同様で、銃犯罪のオンラインアーカイブ「ガン・バイオレンス・アーカイブ」によると、7月13日までに3年連続となる年350件以上のマス・シューティング(4人以上の犠牲者が出る銃撃事件)があったという。
トランプ派の動きも急速に目立ち始めた。
「ユー・ウォン! ユー・ウォン!(あなたが勝った!)」
オハイオ州ウェリントン。数千人の支持者らが6月26日、トランプ氏が大統領退任後初めて開いた集会で、何度も叫んだ。20年の大統領選の結果について、トランプ氏は「(票が)盗まれた」と主張し続け、多くの支持者はバイデン大統領の当選を今も信じてはいない。そして、24年大統領選での復活を熱望している叫びだ。