競泳女子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得し、喜ぶ大橋悠依(gettyimages)
競泳女子400メートル個人メドレーで金メダルを獲得し、喜ぶ大橋悠依(gettyimages)

 東京五輪は7月25日、競泳の決勝種目が始まり、女子400メートル個人メドレーで2019年世界選手権銅メダリストルの大橋悠依(25)が金メダルを獲得した。タイムは4分32秒08。同種目での五輪金メダルは日本女子で初めて。今大会の日本競泳陣で初のメダル獲得ともなった。

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 競泳の中で最もタフな種目の一つと言われる400メートル個人メドレー。一方、「繊細」と周囲から心配され、何度もくじけそうになった日本女子のエースは、五輪初出場で表彰台の一番高いところに立ち、涙をぬぐった。

「『オリンピックチャンピオン』のコールに、自分がオリンピックチャンピオンになったんだなとうれしさがあふれました。正直まだ信じられない気持ちでいっぱいです」

 前日の予選は4分35秒71で2組トップ、全体3位で決勝進出を決めていた。この日の決勝では、最初のバタフライで3位となると、次に得意の背泳ぎで2位に順位を上げた。平泳ぎで2位に1秒半以上の差をつけ、最後の自由形で2位以下にほぼ2秒の差をつける快勝だった。

 無観客の会場には日本の競泳陣が応援に駆けつけた。大橋が最後の50メートルで体一つ分以上の差をつけると勝利を確信し、拍手が巻き起こった。大橋はゴール後、何度も記録が映し出された電光掲示板を見つめ、プールを上がると顔を覆って涙をこぼした。

 滋賀県彦根市出身。この歓喜の瞬間まで試練が続いた。東洋大学時代はけがや重度の貧血に苦しみ、日本選手権の女子200メートル個人メドレーで最下位に沈んだこともあった。

 食事を改善するなどして急激に力をつけ、21歳で初めて日本代表入り。トップ選手は高校時代から台頭することが多いだけに、「遅咲きのエース」とも言われた。大学4年の17年日本選手権の女子400メートル個人メドレーでは日本記録を3秒以上更新して優勝。同年の世界選手権では200メートル個人メドレーで銀メダルに輝いた。

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エースの重圧に苦しむ