ワクチン接種が全世代に進んできている。さまざまな情報が氾濫する中、正しい情報がわからずに不安が大きくなっている人もいる (c)朝日新聞社
ワクチン接種が全世代に進んできている。さまざまな情報が氾濫する中、正しい情報がわからずに不安が大きくなっている人もいる (c)朝日新聞社
AERA 2021年7月26日号より
AERA 2021年7月26日号より

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進むが、はじめてのワクチンに戸惑うことも多いだろう。接種後高熱が出たら、なんとコロナに感染していたという例も。ワクチンをめぐる情報は何が正しいのか。AERA 2021年7月26日号は医師に聞いた。

【グラフ】ワクチン接種回数の推移はこちら

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 ワクチンの副反応ではなかった──。

 テレビ朝日「グッド!モーニング」などに出演している気象予報士の依田司さん(55)が6月29日、自身のインスタグラムで新型コロナウイルスの「L452R変異株(デルタ株)」に感染したと公表した。依田さんによれば、同24日に1回目のワクチンを接種。その後、発熱したため、ワクチンの「副反応」によるものと思っていた。だが、「激しい咳、痰、肺の違和感」があったため、救急病院でPCR検査をすると、コロナへの感染が判明したという。

■コロナか副反応か

 このニュースをネットで知った埼玉県に住む女性(45)は、不安げに話す。

「ワクチンを接種することで、コロナにかかったり重症化したりすることってあるのでしょうか」

 女性は、時期がくればワクチンを打つ考えだったが、今は複雑な心境なのだという。

 4月12日に65歳以上の高齢者を対象に始まったワクチン接種。6月に入ると64歳以下にも広がり、今では1日の接種回数は1回目、2回目ともに数十万人ずつで推移している。7月10日現在で、少なくとも1回接種した「一般接種」(医療従事者を除く)対象者は約4500万人に及んだ。ただ、接種が本格化する中、女性のような心配をする人は増えているのだ。

 そもそも、接種と発症や重症化は関連があるのか。

 ワクチン問題に詳しい「ナビタスクリニック」理事長の久住(くすみ)英二医師は言う。

「インフルエンザのワクチンを打ったからインフルエンザにかかった、という誤解もあります。しかし、インフルエンザワクチンや今回のコロナワクチンは、生ワクチンではなく、感染性や毒性をなくしたワクチンです。このようなワクチンは、接種したことでその病気そのものにかかることはありません」

 依田さんのケースは、ワクチンを打った時期とコロナ発症のタイミングが「偶発的」に重なったと考えられるという。

 仙台市医師会の予防接種担当理事で、仙台市の「かわむらこどもクリニック」院長の川村和久医師もこう話す。

「コロナワクチンを打ってコロナの症状が重症化するとは、医学的には証明も否定もされていません。ただし一般的な理論から考えると、ワクチンを打ったからその症状が悪化するというのは、現実にはあり得ません」

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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