20代の男女4人に話を聞くと、3人は緊急事態宣言が出ていることすら知らなかった。唯一「知っている」と答えた大学生の女性もこう話す。

「『またか』としか思わない。今年の初めごろまでは自粛してストレスをためていたけれど、もう気にならなくなりました。宣言が出たからといって何か行動を変えることはないですね」

 慶応義塾大学大学院の小幡績准教授(行動ファイナンス)は、緊急事態宣言にもはや人流を抑制する効果はないとして、こう指摘する。

「昨年4月、最初の宣言のときは未知のウイルスに対する『恐怖』から皆が行動を自粛しました。けれど、恐怖で行動を支配するのは『ジョーカー』で1度しか使えない。2度目からは『脅し』が利かなくなって自粛効果がなくなりました」

 さらに、最初の宣言時には若者が自粛を「イベント」として消費した側面もあるという。

「『コロナ自粛』がいわば目新しいトレンドで、若者もイベントとして積極的に参加した。ただ、2度、3度と繰り返すうちに関心を持たなくなりました」(小幡准教授)

(編集部・川口穣)

AERA 2021年7月26日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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