蛭田ヤマダ理紗さん(左から2人目)は早稲田大学4年。今後、大学院に進み、ジェンダーと女性学の研究をしていきたいという(写真:蛭田ヤマダ理紗さん提供)
蛭田ヤマダ理紗さん(左から2人目)は早稲田大学4年。今後、大学院に進み、ジェンダーと女性学の研究をしていきたいという(写真:蛭田ヤマダ理紗さん提供)
福井周さんは「Voice Up Japan」でアドボカシー(権利擁護や啓発活動)を担当。医学部に入ることを考え、通信制大学で学んでいる(写真:福井周さん提供)
福井周さんは「Voice Up Japan」でアドボカシー(権利擁護や啓発活動)を担当。医学部に入ることを考え、通信制大学で学んでいる(写真:福井周さん提供)
千種朋恵さんは愛知県立大学3年。日本の入管政策を根本から変えるには、世論の後押しが必要と考え、他大学にも支援者を増やしていきたいという(写真:千種朋恵さん提供)
千種朋恵さんは愛知県立大学3年。日本の入管政策を根本から変えるには、世論の後押しが必要と考え、他大学にも支援者を増やしていきたいという(写真:千種朋恵さん提供)

 出入国管理法(入管法)改正案を事実上廃案に追い込んだのは「Z世代」だ。この法案は外国人への人権上の問題が指摘されていた。若者たちはなぜ憤ったのか。AERA 2021年7月19日号から。

【写真】福井周さんは「Voice Up Japan」でアドボカシーを担当

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 4月15日夜。国会前で一人の若者が、集まった450人近い群衆に向かって訴えた。

「現に存在している一人の人間に、『人間として扱ってほしい』と言わせてしまう社会であっていいはずがない」

 福井周(しゅう)さん(23)。入管法改正案の成立反対を訴えた、緊急アクション「国会前スタンディング&リレートーク」の呼びかけ人の一人だ。声を上げやすい社会を目指して活動する一般社団法人「Voice Up Japan(ボイスアップジャパン)」に所属する。

 国会前スピーチは、一時的に入管の収容を解かれ「仮放免」になった人から聞いた、印象に残ったエピソードを盛り込んだ。

「仮放免になった人は、『自分たちを人間として扱ってほしい』とすごく訴えていました。アパートを借りるとき、『ペット可』と一緒に『外国人可』と書かれているが自分たちはペットと同じなのか、人間として扱ってほしいと。その思いを伝えたかった」

■コロナ禍で困る人たち

 中学生の頃から社会問題に関心を持つ。路上生活者への炊き出しボランティアをし、高校では反ヘイトスピーチ運動に参加。国際基督教大学に入学すると、共謀罪などをテーマに政治への疑問を議論する市民団体「未来のための公共」の立ち上げにも加わった。

 昨年3月に大学を卒業。入管問題に関心が向いたのは昨年末。東京・池袋の炊き出しに参加しているとき、他の炊き出し現場に仮放免の人たちが来ていると聞いたのがきっかけだった。仮放免中の人は在留資格がないため仕事に就けず、生活に困り、健康保険にも入れないので病気になっても病院にいけない。

 コロナ禍で見捨てられている人たちがいる、何とかしなければと思っていると、入管絡みの問題が立て続けに起きた。今年2月中旬、「入管法改正案」が閣議決定された。改正案は、難民申請の回数を制限するなど人権への配慮を欠くと指摘された。さらに3月6日、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が収容先の名古屋入管で亡くなった。

 改正案が成立すれば、排外主義が強まり差別が一層深刻になる──。仲間たちに声をかけ、SNSなどで緊急アクションを呼びかけた。国会前には若者や家族連れが多く集まり、国会議員も駆けつけた。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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