――そして、子どもの頃のひとつの原風景について語った。

加山:台風が来ると、海に大きい波が立つ。その裏側を、見たことあるかな? 俺は子どもの頃から水中メガネをかけて、海に潜って波の裏側をよく見てたんだ。次から次へと波が来て、その通り過ぎる音がする。そういう生活をしていると、いろいろな意味で音楽の見方も変わってくる。オープンリールを裏返しにして聴いてみたり、それを8小節流して家族で誰が正確に覚えられるかやってみたり。俺は逆回しでも一番歌えたよ。波を裏側から見てたから、全部を見ようとする癖がついたんだ。裏を知れば表がわかって、全体がわかる。大切なことなんだ。

SHOCK EYE:今の言葉メモっておきます。

HAN−KUN:常に挑戦していて、音楽が好きなのは年齢関係なくみんな一緒だという精神性は僕たちも持っていると思っていたんですけど、加山さんの言葉は、言霊(ことだま)を聞かせていただいている気持ちになります。

SHOCK EYE:僕らは、決して音楽が上手なわけではなく好きでやってきて、少しずつ上達したと思っていて、やっぱり好きであることが大切だと思っていて。そんな気持ちを持ち続けていたら、いつか加山さんみたいになれるかもしれない、と勇気をもらいます。

加山:いろいろ伝わっているよ。音楽が好きだって言うやつに、悪いやつはいないから。音楽には壁がない。これが好きだからあれはダメ、という問題じゃない。クラシックだろうとポップスだろうとレゲエだろうと、ジャンルを超えて音楽を好きなんだ、と。そういう気持ちを根底に持ってるやつは何にも勝ると俺は思う。年代だって超えていけると思っているよ。

(ライター・小松香里)

AERA 2021年7月19日号