※写真はイメージ(gettyimages)
※写真はイメージ(gettyimages)

 フェイスブックとインスタグラムが今年5月、「いいね!」の数を非表示にできる機能を取り入れることを発表した。SNSの「いいね!」の数を気にしすぎて疲れる「いいね疲れ」を起こす人も増えている昨今。この機能はその解消の一助となるのだろうか。AERA 2021年7月12日号で取り上げた。

【写真】テレビ番組が運用するインスタグラムの中で最もフォロワーが多い番組はこれだ!

*  *  *

 明治大学教授で心理学者の岡安孝弘さん(62)は、私たちには人から賞賛されたい「賞賛獲得欲求」と、人から拒否されたくない「拒否回避欲求」があるという。SNSで「いいね」をもらうとそれらが満たされ、安心感を得ることができる。心理学で言う「強化」にあたる。

「その強化には二つのパターンがあります。ほめられてうれしいと快が生じる『正の強化』、拒否されなくて安心したなど不快が解消される『負の強化』です。『いいね疲れ』に影響するのは多くの場合、後者です」

 例えばインスタグラムに投稿して「いいね」をもらうためには、写真や動画をそれなりに工夫して努力しないとなかなかもらえない。本人が楽しんで「正の強化」でやれている分には、仮に「いいね」をもらえなくてもまだ疲れない。だが「他者から拒否されていないという安心感を得るために」エンドレスにやり続けるとしたら、強いストレスを感じ、精神的に疲れてしまうと、岡安さんは指摘する。

■「お返し」にも疲れる

 一方で、「いいね」をする側が疲れてしまうケースもある。

 初心者やシニア向けのオンラインスマホ教室「パソコムプラザ」代表の増田由紀さんはある日、インスタを教えたばかりの60代の女性から「ちょっと疲れちゃって」と相談された。

「その方は『いいね』をもらったら、その人のインスタを見て、お返しに『いいね』を付けていたようなんです。年配の方ほど律義なので、『いいねをいただいたらお返ししないと悪い』と思いがちだと感じます」

 そうした人たちは、SNSを「日常のコミュニケーションとは異質の、特別なシステムのように」思い込んでいることが多いと、増田さんは言う。

「SNSも人付き合いの一種。気軽に楽しんでと伝えています。『いいね』で疲れてしまうなんて、もったいないですから」

著者プロフィールを見る
小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

小長光哲郎の記事一覧はこちら
次のページ