「こんな生活のはずじゃなかったって、今日は3回唱えました。私は朝ドラの主人公だと思っていたんですよね。私の未来に悪いことなんて起こらない。雨は降らないと思っていたのに」(同)

 彼の転勤についていく話も出たが、ここで会社を辞めるのは「逃げだ」と思った。本当に自分のやりたい仕事かどうかわからないけど、辞めたら自分に負けるような気がした。

「いままでのことを乗り越えてはいないけど、まっすぐ歩いてきたつもり。壁にぶつかっても、悩んで、自分の体温で壁を溶かしていった。脇役でも生きていこうって、ハタチの頃は思えなかった」(同)

(ライター・井上有紀子)

AERA 2021年7月12日号より抜粋