すてきなパートナーと結婚しているはず。学生生活を謳歌して希望する会社に就職するはず。思い描いた希望は果たして── (c)朝日新聞社
すてきなパートナーと結婚しているはず。学生生活を謳歌して希望する会社に就職するはず。思い描いた希望は果たして── (c)朝日新聞社

 東京五輪の招致が決まった2013年、7年後の自分の未来を想像した人もいただろう。まもなく五輪が開催される今、何を思うのか。AERA 2021年7月12日号から。

【写真】ウーバーイーツの配達員を始めた五輪メダリスト

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「東京五輪までには結婚して、出産したい」「そのとき、自分は何をしているのだろう」「誰と観戦するのかな」

 東京五輪・パラリンピックの招致が決まった2013年、大会が開かれる7年後の未来を想像する人たちがSNSに続出した。漫画『東京タラレバ娘』でも、五輪をきっかけに婚活を意識したアラサーの女性が描かれた。リアル・タラレバ娘たちはいま、どうしているのか。東京2020に照準を合わせたのはスポーツ選手だけではない。

「五輪のとき、私は何歳なのかな」。招致決定当時の8年前、大学生だった女性(当時21)はテレビを見て思った。タレントが「その頃、私は60歳ですよ~」と言うから、女性も未来の自分を想像してみた。

 アラサーになって、普通にキャリアウーマンをやっているはず。クリーニングに出したスーツを着て、磨いた靴を履いて、コーヒーを買って出勤して、メールはもちろん即レス。当然、結婚はしている。アフター5は料理を作って、素敵な旦那さんに食器を洗ってもらって、ドラマを見て、お風呂につかる。

朝ドラの主人公だった

「大学まで特に失敗したことはなかったし、ドラマに出てくる女性みたいに、仕事もプライベートもキラキラするものだと思っていました」(女性)

 現在、29歳になった女性の一日はこう。朝7時に起きて、床に落ちたスーツをはたいてしわを伸ばし、15分後には家を出て、会社に滑り込む。上司に怒られ、社内で走り回る。昼ご飯は朝作ったお弁当。といっても、弁当箱の中は、白ご飯とタラコだけ。ランチに行く時間はないし、コンビニご飯はもう飽きた。夕方、もうひと頑張りしようと飲んだ栄養ドリンクに、甘みを感じない。夜9時に会社を出て、コンビニに。帰宅後はスーツを脱ぎ捨てて、ベッドに倒れこむ。

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