「0.5%程度なんて、わずかな違いじゃないか」と思うかもしれない。しかし、長期間にわたると大きな差が出る。毎月2万円を30年間投資した場合、3%と3.5%の運用では100万円以上も違ってくる。

「一物多価」問題には金融庁も厳しい目を向けている。赤沢亮正内閣府副大臣は2月の講演会で、「同一のベンチマークに連動する指数にもかかわらず、手数料水準の異なるインデックスファンドがある」と提起した。

 信託報酬が高くなりがちなのが、金融機関が対面で販売する商品だ。ある地銀が実施した「投資信託キャンペーン」では、投信を買った人に1千円分のギフトカードをプレゼントした。だがチラシに小さく「ノーロードは除く」とあった。「ロード」とは販売手数料のこと。つまり「手数料をとれない商品は対象外」という意味だ。目先のお金に目が行くと、それを上回るコストを払わされかねない。

 人気が高まっている「ファンドラップ」というサービスも、手数料に留意して利用したい。金融機関に専用口座(ラップ口座)を設けて、運用をプロに任せる仕組み。20年3月末の口座数は約100万件で、5年前の3倍以上に増えた。以前は最初に必要な預け金が1千万円以上など富裕層や高齢者向けが中心だったが、最近は300万円など、若い世代にも手を出しやすい商品が出てきている。

 ラップ口座は残高に応じて手数料がとられる。大手だと最大1.3~1.5%程度が多い。さらに投資する商品にも信託報酬がかかり、系列の運用会社が開発した投信を優先するケースもあるようだ。

「顧客第一」の姿勢が貫かれているか。利用者もお金を預けっぱなしにせず、注意してみておく必要がある。(朝日新聞社会部・柴田秀並)

AERA 2021年7月5日号