そこで登場するのが「払済」という制度。途中で保険料の支払いを止めても、当初の契約期間中は保障を続けられる仕組みだ。解約時に受け取る返戻金で保険料をまとめて支払うイレギュラーな手法だが、金銭的な理由で支払いが困難になった時に使われている。もちろん支払総額が減るので保険金も減る。

 先のFPは「保険料の支払いが負担だったら、(解約手数料がかからなくなる)10年後以降に払済にすればいいですよ」と説明し、わざわざシミュレーションの資料まで作っていた。

 だが「払済」には大きな問題がある。変額保険はメリットの一つに「長期・積み立て・分散」投資をうたうが、その効果をやめることになる。さらに死亡保障の費用は、「払済」に切り替えた後も、投資の積立金から差し引かれてゆく。しかも市況が悪い時は多く抜かれ、回復しても積立金は元の水準には戻らない仕組みになっている。実は市況の変化に弱いハイリスク商品に生まれ変わってしまうのだ。

 そうした「不利益説明」はほとんどされていない。金融庁幹部も「デメリットをどこまで説明しているか厳しくみないといけない」と話す。

■NISAフックに注意

 岩城さんはこうした状況に警鐘を鳴らす。「コンサルティングを金融商品を売るツールにしか考えていない『腹黒FP』もいるので、注意してください」

 素人が見抜くにはどうすればよいか。ヒントになるのは、FPや代理店が扱う商品を覚えておくことだ。代表的なのは「NISAやiDeCoの制度を説明します」と言いつつ、実際に訪れると高い手数料の商品を勧誘するやり方だ。「NISAフック」と呼ばれる手法で、変額保険を勧められることもある。

 投信を始めたいなら、なにより手数料には要注意だ。

 初めて買う人の多くは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)といったベンチマーク(指標)に連動した商品に魅力を感じるだろう。インデックス投信と呼ばれるもので、様々な商品があり、値動きも分かりやすい。同じベンチマークを参考にしているなら運用実績はほぼ変わらないはずなのに、商品によってコストの差が大きい。

■一物一価が「7価」に

 日経平均連動型の投信で代表的なのは、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」。信託報酬は最安値水準の0.154%だ。だが、ほかの投信では0.5~0.7%台もある。ある大手運用会社のラインアップを見ると、「一物2価」どころか「一物7価」だった。

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