「五輪開催について、政治は科学的エビデンスに基づいて判断しているのか、と国民の多くは疑問に思っています。しかし、菅首相はおうむ返しに安心安全と繰り返すだけ。現状は、安全と安心が乖離(かいり)しています。日本軍の組織の生理と病理は、戦後も断続しながら非連続的に受け継がれているのではないかと思います」

 東京五輪は7月23日に開会式を迎える。姜さんは、開催に執着するのであれば、無観客開催と、何より菅首相の明確なメッセージが必要と語る。

「1995年の阪神・淡路大震災のとき、当時の村山富市首相は『全ての責任は自分が取る』と言って担当大臣を存分に行動させました。菅首相も『五輪開催に際して生じる様々な結果に関して内閣総理大臣の私が全ての責任を負う』と国民に向かってはっきり言うべきだと思います」

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年7月5日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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