エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
五輪開催の準備が着々と進んでいる。開催まで1カ月の6月23日夜、東京・お台場の海上には五輪マークが浮かんだ (c)朝日新聞社
五輪開催の準備が着々と進んでいる。開催まで1カ月の6月23日夜、東京・お台場の海上には五輪マークが浮かんだ (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】東京・お台場の海上に浮かぶ五輪マーク

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 G7の開催地だったイギリスのコーンウォール地方で、サミット終了後に新型コロナウイルスの感染者が急増していると報じられています。イギリスではワクチン接種が急速に進む一方で、まだワクチンを打っていない若い人たちの間で、感染力の強いデルタ株が広がっているとのこと。コーンウォール地方でも、サミット開催で人が集まったホテルやパブ、バーなどで働く人に感染が広がったと見られているそうです。

 イギリスほどワクチンの接種が進んでいない日本では、もうすぐオリンピックが開催されます。既にウガンダの選手団で複数の陽性者が出ていますが、海外から持ち込まれるだけでなく、開催地に大勢の人が集まることで新たなクラスターの発生もあり得ます。開催が強行された場合を想定して、現実的な防衛策を考えなくてはなりませんね。

 もしオリンピックで新たな感染拡大の波が起きたら、自分は、家族は、どうすればリスクを減らせるだろうか。知らずに感染して周囲に広げないために、何に気をつければいいか。一日も早いワクチン接種が何よりですが、ここへ来て職域接種用のモデルナのワクチンが足りなくなり、申請受け付けを一時休止するとのこと。肝心の時になぜと思わずにいられません。

 ワクチンを打った人が少しずつ増えてくると、接種済みだからもう大丈夫と、会食や飲み会を計画することもあるでしょう。まだ打っていない人にも、他の人たちが接種済みだから大丈夫だよと声をかけるかもしれないですね。そうやって警戒を解いて街に出た人たちがいろいろな人に接触して、予想外の感染が起きかねません。オリンピック開催が決まったならいっそ楽しもうと気が緩む人もいるはずです。

 今は、近づきつつある大型台風を見るような心境です。被害が最小で済みますように。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年7月5日号

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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