会見する赤木雅子さん。「なぜ夫が死に追い込まれなければならなかったのか、原因と経緯を明らかにしてほしい」と訴えた(撮影/Tsuno Yoshikazu)
会見する赤木雅子さん。「なぜ夫が死に追い込まれなければならなかったのか、原因と経緯を明らかにしてほしい」と訴えた(撮影/Tsuno Yoshikazu)
518ページに及ぶ「赤木ファイル」の1ページ目は「備忘記録」。「佐川理財局長に説明後、再修正」などと記されている
518ページに及ぶ「赤木ファイル」の1ページ目は「備忘記録」。「佐川理財局長に説明後、再修正」などと記されている

 森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、自死した同省近畿財務局職員の赤木俊夫さんがその経緯を記した「赤木ファイル」が開示された。妻の雅子さんの思いとは。AERA 2021年7月5日号から。

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 今年6月24日──。雅子さんの姿は、日本外国特派員協会(東京都千代田区)にあった。海外にも思いを伝えるため、会見を開いたのだ。

「夫のような死が二度と起こらないように、国は第三者委員会による再調査を行い、理財局内部のメールも含めて調査し、事実を細部まで明らかにして、未来への教訓にするべきではないでしょうか」

 俊夫さんの遺影を前に、雅子さんは訴えた。

 赤木ファイルは出てきたが、職員の名前など「黒塗り」の部分がある。最初に改ざんの指示を出した財務省の職員は「補佐」としかわからない。また、佐川氏の指示がどのように俊夫さんにまで関わったのか具体的な経緯は明らかになっていない。佐川氏や財務省内部のメールは開示されていないからだ。さらに、問題の発端となった、国有地の森友学園への約8億円の値引きの経緯についても不明だ。

「そこが知りたくて裁判を行ったのに。佐川さんの上の人がどのような指示をしたかも、見当がつきません」(雅子さん)

 この日の会見で雅子さんが特に強調したのが、財務省のトップ、麻生太郎財務相の責任問題だった。だが、麻生氏は一連の問題についての再調査を強く否定している。22日の閣議後会見でも「財務省としてできる限りの調査を尽くしており、再調査は考えていない」と述べた。

 雅子さんは麻生氏に対し、「調査される側であって『再調査しない』と言う立場ではない」と訴える。さらに「公文書改ざんの罪は重いが、いまだ財務大臣を続けている」と批判する。

「もし部下のことを思う心があれば、二度と部下が同じような死に追いつめられないように何らかの行動を起こすべきではないでしょうか」

 と語気を強めた。

 赤木ファイルについて、国は「これで全て」と述べている。だが雅子さん側は、全て開示されたか明らかではないとして、原本の提出を国に要求した。

 雅子さんは言った。

「このファイルは夫が苦しい立場に追い込まれながら残してくれたもの。最後の夫の魂の叫びです。全て出してほしい」

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年7月5日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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