3歳の娘と一緒にベランダの花に水をやり、コンポストをかき混ぜるのが日課になった。

「これはパイナップルの頭だね」「卵の殻だね」と自分たちが食べたものを振り返ることは、娘の食育の機会にもなっているのではないかと感じている。

 2カ月ほど投入し続けたが、分解されていくため、ゴミがあふれたりすることはない。

「不思議ですよね。ブラックホールみたい」

 と和知さん。現在は堆肥が完成するまでの「熟成」期間中。完成したらそれを使ってベランダで野菜を育てる計画だ。

 なぜ「都会でできるコンポスト」が開発されたのか。

 ローカルフードサイクリング社長のたいら由以子さんは、25年前に父親ががんを宣告されたことをきっかけに、食や環境の問題に危機感を持ち始めたという。土の改善に持続可能な暮らしのヒントがある、そう考えて行き着いたのがコンポストだった。NPOを立ち上げてコンポストの普及に取り組んできたが、課題解決には都市部での取り組みが鍵になると感じてきた。

「田舎に持っていって堆肥化すればという人もいますが、それじゃ意識が育たないんです。スーパーで買って食べてゴミを捨てる。その『捨てる』の部分を、『コンポストに混ぜる』というプロセスに変えて小さな循環を経験してもらえたら、世の中は変わると思いました」

 コンポストを始めると、資源化の楽しさに気づいたり微生物や環境に興味を持つようになったりするため、生ゴミ以外のゴミも減る人が多いのだという。

■生ゴミは最大の資源

「生ゴミは生活ゴミの3、4割を占めます。日本は廃棄物の処理に2兆円かけていますが、そのうち1兆円が生ゴミの焼却に使われている。生ゴミは最大の資源なのにもったいない。循環させるべきなんです」

 そう語るたいらさんは、「2030年までに生ゴミ焼却ゼロ」を目指し活動を続けている。

 LFCコンポスト以外にも、庭に穴を掘って容器を埋め込む方法や、電気を使って乾燥させる方法など、コンポストには様々なやり方がある。庭がなくても可能で、最小限の費用で始めるなら、ダンボールコンポストという方法もある。

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