「劇的に振り切れていますね。マスコミはどうしてもそういう人が多いですよ」(梶本医師)

 後に聞くと、男性デスクが睡眠前に好んで聴くのはハードロックかヘヴィメタル。朝から晩まで集中力がギンギンなのだ。

 一方こちらはというと、自律神経機能が超低空飛行。高いとは思ってなかったが、57歳相当といわれてちょっと凹む。「体内年齢は29歳」と、タニタの体組成計は言ってくれているのに!

「まあ、一言でいえば、ひどいものです」(梶本医師)

 では、短期間で疲労をどれだけ回復できるか実験だ。

 やり方はかんたんだ。自律神経中枢の疲労をとるため脳を冷やし、規則正しい生活を心がけ、激しい運動はせず、イミダペプチドが豊富な鶏むね肉を食べる。ただし、無理せずできる限り。

■自律神経機能が回復

 就業中の男性デスクの様子に変わりはないが、就寝時に氷枕を使い、サラダチキンを食べているという。3日後、さわやかに言った。

「かなりいいですよ。氷枕はひんやりして気持ちいい。若返っちゃうんじゃないかなあ」

 こちらはエアコンを26度で一晩中稼働させ、鶏むね肉に加え、何かの助けになるのであればとスパイスカレーも3種類作って5日間食べ続けた。ただし、就寝と起床だけは規則正しくできなかった。夜はあれこれやりたいことがあるし、枕元にスマホは手放せないし、朝は貪欲に寝ていたかった。

 5日後の同じ時刻、再びクリニックを訪れた。

 果たして今回の数値はというと、男性デスクの自律神経機能はなんと41歳相当に若返っていた。自分は54歳相当。交感神経と副交感神経のバランスはというと、男性デスクが半減するも激高、自分は基準値内に収まっている!

 梶本医師は朗らかに言った。

「脳疲労、特に自律神経の回復は長期戦で、V字回復するものではありません。始まりとしてはよいのではないでしょうか」

 脳疲労回復の道は1日にしてならず。けれども、手応えみたいなものはつかめた。何より、ちょっと体が軽い。寝起きが劇的に良くなる日も遠くない。(編集部・澤志保)

AERA 2021年6月28日号