岡田:いや、役では避けますけど、実際には(笑)。

堤:岡田くんならできる!

岡田:以前、弾道が赤い線で見えたと言っていた格闘技の達人がいました。「赤い線を避ければいいんだよ」と(笑)。でも、僕、それはまだ経験してないですから。

堤:弾が飛んでくる場所に行くことはないもんね(笑)。

■役者って何だろう

――前作に続き、岡田はアクション作りにも参加し、チームを牽引した。団地を丸ごと借り切って建物修繕用の足場を組み、その足場を端から崩していく“団地パニック”シーンは、命綱一本で壮絶なアクションに挑んだ。

 だが、昨年の1度目の緊急事態宣言が出て撮影は中断。公開日も延期となり、「エンターテインメントの在り方を何度も考えた」と二人は振り返る。

岡田:団地のシーンは「日本映画ではあまり見たことない画」をテーマに撮影できたので、たとえ仕切り直しになっても撮影自体がなくなることはないかなと思っていました。でも、撮影が再開するとき、「今やっていいの?」という葛藤は正直ありました。秋ごろにはエンタメの意義のようなものが話題になり始めたけど、その前でしたから。

堤:僕は、東日本大震災の後、映画を撮ってたんですけど、そのときのことを思い出していました。貸してくれるはずのロケ地を貸してもらえなかったこともあったり、こんな時に何やってんだろう、僕ら役者の仕事って何だろう、と考えることも多かったですね。

岡田:「闘う意義」みたいなことを改めて深く考えた作品になりました。感染対策とはまた別に、コロナ以前から「安心安全を第一に」という作品作りをする時代になって、それは必要ではあるんですけど、やっぱり限界を超えて挑戦し続けることも大切だと僕は思います。「ファブル」はいろいろな意味で相当闘って作り上げました。タイミングが合えば劇場で観ていただきたいです。が、無理はせず(笑)。

堤:大変なことに直面している人にとったら、エンターテインメントどころじゃないのは当然だと思います。ただ、僕らはこういうものづくりしかできない。だから、なにかしらの形で僕らの仕事が誰かの助けになったり、元気づけることができたりしたら、僕らも救われるような気がします。

(ライター・大道絵里子)

AERA 2021年6月28日号