堤:どんな役でもそうですが、伏線を引くような芝居は絶対してはいけないと思っていて。宇津帆が慈善事業をしている時も、裏の気配をにおわすことは一切なくして、心底クリーンな人に見えないといけない。「俺は悪いことやってるんだ」という意識で生きている人にはしたくなかったんですよね。自分なりの正義で「殺すのにも理由がある」という、そのほうが僕は怖いなと思うので。

■堤さんだからこそ

岡田:そうですね。でもその一方で、ヒナコとの間に映画ならではの二人の関係性を感じました。原作よりも二人で過ごした時間軸みたいなものが透けて見えて、心を通わせているようにも感じられて。大詰めのバトルとなる森のシーンでは特にそうでした。それは堤さんだからこそだと思うんですけど、平手さんとコミュニケーションをとって、関係性を作り上げて現場に立っているからこそ、そう映ったのかな、と。

堤:宇津帆がヒナコに対して本当に愛情があるのかは、監督とも話しましたが、ともかく、彼女の前では確実にそう見せることは必要だと思って……だから、悪役を演じる楽しさよりも、そのへんのさじ加減の難しさを感じることのほうが大きかったかもしれないですね。

――何度もタッグを組んできた二人だからこそ変化も感じた。

岡田:堤さんと出会った「フライ~」のころは、作品に向かい合う集中力とかも含めて、ちょっと怖かったんですが、今はふらっと現場に入って、ふらっと演じる「達人系」になられて(笑)。現場に入る直前までお話ししながら、自分で気持ちのアップを図っている感じですよね。

堤:そうだね。20代、30代は家に帰っても演技のことしか考えてなかった。精神が病みそうになるくらい考え詰めていたけど、40代になってだんだん変わってきましたね。岡田くんもあの頃はかわいい感じだったけど、今はもう、大人になられて(笑)。

岡田:出会った頃の堤さんと同じ、40歳になりました。

堤:僕とは全然違うリーダーシップのある人ですよね。アクションもそうですが、多くのことを自分で積極的にやっている。「SP」の時から、この人は本当にピストルの弾を避(よ)けられるなと思ったから。

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