UZUZのオフィスでキャリアアドバイザーに転職の相談をする男性(左)。同社では個人にあわせた就業のサポートをしている(写真:UZUZ提供)
UZUZのオフィスでキャリアアドバイザーに転職の相談をする男性(左)。同社では個人にあわせた就業のサポートをしている(写真:UZUZ提供)
AERA 2021年6月28日号より
AERA 2021年6月28日号より

 すぐ辞めたダメなやつ──。そんなレッテルを貼られていた「第二新卒」。今や企業の見方が大きく変わり、売り手市場へと転じている。AERA 2021年6月28日号で取材した。

【図】新卒で就職した学生のうち3割は3年後に辞める?

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「第二新卒の方、大歓迎!」

 転職情報サイトの「マイナビ転職」をみると、1万3千件超の求人のうち、実に8割が第二新卒を積極的に受け入れると表明していた(6月14日時点)。採用する側は、転職者にはある程度キャリアを積んだ人を求めているかと思いきや、いまや経験が浅くても、人物本位で採用するのが常識となっているようだ。

 第二新卒に特化した就活エージェント・UZUZ(ウズウズ)の川畑翔太郎専務が解説する。

「(2008年の)リーマン・ショックから労働市場が回復して新卒が採用しにくくなり、仕方なく第二新卒を採用する企業が増えました。その後、実際に採用して“新卒に勝るとも劣らない”と思った企業が積極的に募集するようになりました。求人数はコロナ禍で大きく落ち込みましたが、だいぶ戻ってきた印象です」

 今春、第二新卒として転職活動に取り組んだ男性(23)は求人の多さに驚いたという。

「エージェントから紹介される求人が多すぎてスケジュール調整が追い付かない。選考を受けている企業も、第二新卒だからとマイナスに見られる感じはありませんでした」

■「苦戦」するのが常識

 男性は活動を始めて1カ月ほどで、希望していたエンジニア職での採用が決まったという。

「第二新卒」とは、明確な定義は定まっていないものの、おおむね「新卒で入社後3年以内に辞めた人たち」を指す。卒業後一度も就職していない若者は「既卒」といい、採用市場では区別されることが多い。

 これまで第二新卒は、転職で「苦戦」するのが常識とされてきた。新卒の採用枠では入社試験を受けられず、中途採用で求められるだけの経験もない。そのため労働市場での評価が極端に低く、求人数も少なかった。

 かくいう記者も、第二新卒ではなかったが、大学を卒業して2年後に就職活動をした際は、登録したエージェントから「新卒の10倍苦労すると思ってください」と、かなり強めに忠告された覚えがある。

 第二新卒という言葉自体はバブル期から使われてきたとされるが、00年代前半に大手就職サイトが大々的にキャンペーンを展開し、メディアでも頻繁に取り上げられて一般に広まった。

 当時を知るキャリアコンサルタントの男性はこう振り返る。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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