生後2日目の計測で147グラムだった体重は3カ月後に6キロ、半年後に12キロと直線的に増えていきました。最初は母乳だけで育ちますが、8カ月を迎えた頃には母親が食べるタケやリンゴを口にくわえるようになり、見よう見まねでタケの葉を食いちぎることもありました。パンダは野生下では1歳半から2歳に親離れをします。シャンシャンも1歳5カ月を迎えた頃から母親と離れる時間を徐々に増やし、1歳半になった18年12月から単独生活になりました。現在は75キロを超え、人間にたとえると高校生くらいでしょうか。大人のパンダの平均は80~120キロですが、シャンシャンはお父さんが135キロ、お母さんが120キロと大きいので、もう一回りか、二回りは大きくなるでしょうね。

■ガラスに近寄ってきた

――半年を過ぎた17年12月に一般公開を開始。抽選方式を導入したが、初日は約46倍、初めての休日は約144倍だった。

 一般公開まで1カ月あまりとなった10月末の休園日に職員を動員し、本番さながらの「練習」をしました。不特定多数の職員がガラスの前を行ったり来たりすることで人に慣れてもらうんです。数人から始め、最後は80人に。歓声を上げたり、あえて大きな動作で手を振ったりしましたが、シャンシャンは驚くどころか、興味深そうにガラスに近寄ってきました。怖がって奥に引っ込んでしまうかもしれないと心配しましたが、杞憂でしたね。園で初めて生まれ育ったトントンを86年に公開した時は、あまりの人の多さに驚き、丸太に登ったまま下りて来ず、公開は8分で終わりました。パンダの飼育方法は90年代に大きく変わり、母親に任せるのではなく、人が介入する方法に変わっています。シャンシャンは生後2日目から身体検査を始めており、そういう環境の違いが影響しているのかもしれません。

――シャンシャンの帰還後、上野のパンダはリーリーとシンシンの2頭に戻る。2頭は相性がいいとされ、上野ではさらなるパンダの誕生を期待している。

 シンシンは現在、15歳。17~18歳までは妊娠できるはずなので、あと1~2頭はいけるかもしれない。我々も技術を蓄積し、どこかで双子が生まれたらいいなと思っています。

(構成/朝日新聞社・西村奈緒美)

※AERA 2020年11月23日号より抜粋