とびうお天寿し(写真/筆者提供)
とびうお天寿し(写真/筆者提供)
ボラの皮つき炙り(写真/筆者提供)
ボラの皮つき炙り(写真/筆者提供)
国産漬けシイラ(写真/筆者提供)
国産漬けシイラ(写真/筆者提供)

 最近はラーメン屋さんやうどん屋さんで、「あごダシ」を使った料理を出すところが増えてきました。あごダシの味は、上品な中にも深いコクがあって筆者も大好きです。

 ご存じの方も多いと思いますが、あごダシはトビウオを使った出汁です。トビウオの頭と内臓をとって、一度焼いてから出汁を取るそうです。イワシやサバなどに比べて脂肪分が少なく、青臭さも少ないので、特に麺類によく合うそうです。

 トビウオといえば、その名の通り空を飛ぶ魚として有名です。大きな胸ビレを広げて、水面上をグライダーのように滑空している姿を見たことがある方もいるかもしれませんね。

 トビウオのヒレは、胸ビレのほかに腹ビレも大きく発達しており、さらに尾ビレも大きくなっています。飛ぶ際には、まず尾ビレで勢いよく水をかいて加速して水面に飛び出し、水面上では大きな腹ビレを横に広げて、グライダーのように風に乗って滑空します。条件がよければ、最大で600メートルも飛べるそうです。

 一見気持ち良さそうに水面上を飛んでいるように見えますが、トビウオたちは、そんな悠長な気分で飛んでいるわけではありません。

 トビウオたちが飛ぶのは、シイラやマグロなどの捕食者から必死で逃げている時が多いんです。水中から海面上に出ることで、捕食者の視界から外れて逃げようとしているんです。
ところが、敵も慣れたもので、水中から出てもそのまま追尾を続け、海中に戻ったところを食べてしまいます。

 トビウオが逃れるためには、捕食者が諦めるまで遠くまで飛び続けるか、腹ビレを使って、空中で向きを変えて捕食者の追尾をかわさなければなりません。さらに海面上を飛んでいれば安心かというと、そうでもありません。海面上には、彼らを狙うカモメなどの海鳥がいて、飛行中のトビウオを捕らえてしまいます。

 トビウオたちにとっては、「前門の虎、後門の狼」ならぬ「海中のシイラ、海上のカモメ」状態なんです。自然界って本当に厳しいですよね。

 ところで、トビウオ以外にも海面上を飛ぶ魚がいることをご存じですか?

 トウザヨリなども海面上を飛びます。飛ぶ原理や理由もトビウオと同じです。魚ではありませんが、トビイカいうイカも、漏斗から噴射したジェット水流と大きなエンペラーを使って、海面上を飛ぶことができるそうです。イカが海面上を滑空している姿を一度は見てみたいものです。

著者プロフィールを見る
岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

岡本浩之の記事一覧はこちら
次のページ
絶体絶命なのは…