エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
オンラインコミュニケーションがすっかり日常になった一方で、リアルでのやりとりが恋しい(撮影/写真部・張溢文)
オンラインコミュニケーションがすっかり日常になった一方で、リアルでのやりとりが恋しい(撮影/写真部・張溢文)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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「オンライン同棲」という言葉を6月21日号のAERAで知りました。ビデオ通話の画面をつなぎっぱなしにして、まるで一緒に暮らしているみたいなカップル。私も昨年来、家族と「オンライン同居」しています。

 ちょうど先日、またいつものように夕ご飯の時にiPadのカメラに顔を近づけて息子たちに「うわーん会いたいよー」と言っていたら、夫に「子どもたちと話している時間も、子どもたちの部屋にいる時間も、俺より慶子の方がよっぽど長いよ!」と言われました。「一緒に暮らしてても俺は慶子ほど長い時間子どもとおしゃべりしないし、部屋にだって30秒くらいしか入れてもらえないよ」と。

 確かに、ご飯を食べながら長男と英国王室のゴシップで盛り上がったり、次男の日本語の宿題を夜遅くまで手伝ったり(外国語の授業で日本語を履修しているのです)、食後や休日は息子たちの部屋に画面ごと連れていってもらって寝るまでつないでいたりしています。「体は離れているけど、“一緒に過ごす”時間は俺よりも慶子の方が確実に長い」という夫の指摘はもっともです。

 でも、ハグしたり匂いを嗅いだり、いつでも身長比べしたりできるのはやっぱりうらやましい。一緒に買い物に行くとかね。

 リアルな接触に飢えた私は、最近カラスと親交を温めています。ベランダの手すりに近所のカラスが止まるようになり、ついにベランダの内側に入ってくるように。毎度律義に挨拶をしていたら、なんと先日は洗顔している時にベランダから「かあかあ」と呼んでくれました。窓を開けたままPCの前で寝落ちしていた私を早朝にカラスたちが騒いで起こしたのも、親切心からではないかしら。こうしてだんだん距離が縮まるときめきは、生身ならでは。さすがにカラスとはオンラインでは仲良くなれませんものね。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年6月28日号

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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