続いて、真菜さんの故郷、沖縄に住む父親の上原義教さんが質問に立った。

 黒いスーツに紺色のネクタイ姿の上原さんは言葉を詰まらせながら、被告に対し、あなたは人間の心を持ってないのか、過ちを認めずに車のせいにする、悲しみと怒りを覚えると訴えた。

「私には夢がありました。真菜と莉子にも夢がありました。そのすべての夢が奪われました。せめて、自分やった過ちを認めていただきたい」

 しかし被告は、

「お二人が亡くなられたことについては、本当に悔やんでおります。車で出なければ事故が起こらず、お二人の命もそのまま大丈夫だったわけですから」

 などと答えるだけ。上原さんは、

「最後に一言だけ」

 と、被告に向かってこう言った。

「もう一度、よく考えてほしい。本当に自分は悪くなかったのか。心の底から『ごめんなさい』と聞けるのを楽しみにしています」

 被告にこの声は届いたのか。被告は、車いすに乗り、下を向いたまま退廷した(編集部・野村昌二)

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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