同席した夫はオペには反対でした。

「どちらにしても、ゆうはぴぴと同じように、あと何十年も生きられる訳ではないと思う。
何もしないで4年しか生きられないのと、身体を刻まれて死ぬほど痛い思いをすることで寿命が10年延びたとして、一生仰向けの状態のまま14年。俺ならオペをしない方を選ぶよ」

■完治は見込めず再発も

 背中に脂肪がほとんどない長女は、大きな傷やボルトが常にマットに当たり続けることになります。命が延びるのは苦痛な時間が延びることにもなりかねず、自分なら迷惑だ、と。
すでに完治は見込めない状況であり、再発の可能性があると言われたのも、彼が反対した大きな理由のひとつでした。

 ただ、最終的な結論は私が決めるべきであり、私が手術を望むのならそれでよいとも言っていました。

 考えても考えても結論は出ず、「ゆうちゃんはどうしたいの?」と言っては涙が止まらなくなり、何も手に付かないまま1日が終わってしまう日が続きました。長女はそんな私のメンタルを敏感に察知し、涙を流すたびに不安そうに「まぁま?」と言いながら、私の顔に向かって右手を伸ばしました。

「ゆうちゃん、どうしようか。でも痛いの嫌だよね」

■お腹から背骨が触れた

 そんな中、子どもたちを連れて、小児科医の友人あーちゃんのクリニックにインフルエンザの予防接種に行きました。次女と息子が先に終わり、「ゆうちゃん、もしもしさせてね」とあーちゃんが長女のおなかを触り、「ちーちゃん、ここ」と私にも長女のおなかを触らせてくれました。

 お臍の左横に、私でもわかるくらいにしっかりと骨が触れました。

「(上から背骨が触れるのは)まだ数年先と言われたのに?」

「うーん、でもこれ骨だよ。もう一度正面のレントゲン見せてくれる?」

 長女の側弯は、縦線の曲がりだけでなく、腰に近い部分が前に出始めており、おなか側から背骨が触れる程になると命に関わるような腸閉塞が起きやすくなるため、少しずつ進行する呼吸苦より注意が必要と言われていました。

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「家族全員で考えるべき」