石川:芳根さんは優しいのでそう言ってくれますけど(笑)、本来監督は向こう側から「こっちに来てください」と役者を導く役目だと思うんですが、今回は行き着く先がわかっていなかったので、横に並んで「どう思いますか?」「わからないので、とりあえず今日乗り切ってみましょう」みたいな感じというか。だから芳根さんとは戦友みたいな感覚があります。

芳根:身体が老いていくのは、背中を曲げたり、白髪を入れたりすればそう見えるので、演じる方も比較的簡単なんですよね。でも、中身だけが老いるというのは、内側から出ていく表現方法しかないので、想像力を試されている感じがすごくしました。10代のリナを演じている時に、30代のリナの演じ方がピンときた瞬間があって、石川監督に伝えにいったんです。それまでは10代のリナのことを意識し過ぎていたんですが、リナが30代で永遠の命を得るまでの約10年の間にはいろいろな出来事があった。だから、30代ではガラッと変えていいですか?と。

石川:そう。10年後にどうなったかを考え、そこからまだ先があるということを考えて、「じゃあこの中間では……」みたいなことではないねと、妙に納得したんですよね。それで30代のリナを作ってみた後で、90代を考えればいいんじゃない?と。

芳根:私にそんなに手札があるかなと、正直ドキドキしたんですけど(笑)。でも逆算してやるものではないな、とすごく思いました。人間は大きく変わることもありますし、今をどう生きるかが大切なんだと気づいたんですね。

――いま、「不老不死」に向き合った理由はなんだろうか。

石川:僕はそろそろ44歳になるんですが、アンチエイジングのために若い時からさまざまなことをやるという傾向が強くなりながら、人生自体が延びている感覚があったんです。アンチエイジングの先にストップエイジングがあると考えると、原作の『円弧』で描かれていることはそこまで突飛な話ではないし、「今の自分たちの人生の時間の進み方はどうなんだろう?」と一度考えてみたいと思ったんです。自分事としてリナの人生をどう見るのかという興味が、すごくあったんですね。

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