リユース業界の革命児といわれる元サッカー選手の視線の先には、グローバル戦略が広がる(撮影/加藤夏子)
リユース業界の革命児といわれる元サッカー選手の視線の先には、グローバル戦略が広がる(撮影/加藤夏子)
仕事が趣味の嵜本も時には社員とゴルフやフットサルに興じる。休日には3歳の息子とボールを蹴り合う子煩悩な父親でもある。息子のことを語るとき顔が緩む(撮影/加藤夏子)
仕事が趣味の嵜本も時には社員とゴルフやフットサルに興じる。休日には3歳の息子とボールを蹴り合う子煩悩な父親でもある。息子のことを語るとき顔が緩む(撮影/加藤夏子)

 バリュエンスグループCEO、嵜本晋輔。ガンバ大阪の選手になって3年目、嵜本晋輔は戦力外通告を受けた。目の前が真っ暗になった。やがて父の会社に入社。仕事の遅れを取り戻すかのように、がむしゃらに働いた。兄たちと支え合い、リユース業で嵜本はめきめきと頭角を現した。社員800人を抱え、チームワークを大事にし、失敗はチャンスと考える。それは嵜本自身がサッカーから得た宝だ。

【写真】仕事が趣味の嵜本も時には社員とゴルフやフットサルに興じる

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 日本国民の大半の心配をよそに、このコロナ禍の中、東京五輪・パラリンピックが開催へ突き進んでいる。日本選手団は日本五輪史上最大の500人超と予想されているが、宴の後、彼らは厳しい現実を突きつけられる。五輪だけを見据えて全エネルギーをつぎ込んできたため、大会が終わった途端に多くの選手はセカンドキャリアに戸惑う。これまで、そんな選手を数多く見てきた。

 プロアスリートも同じ。野球やサッカー選手で現役を退き、コーチやフロントに残れる人はほんのわずか。多くは第二の人生に頭を抱える。

 そんな厳しい環境の中、華々しいセカンドキャリアを切り開いた選手がいる。Jリーグ「ガンバ大阪」のMFだった嵜本晋輔(さきもとしんすけ)(39)だ。ラグジュアリーブランド商品のリユース市場で成功し、起業7年目でマザーズ上場を果たしたバリュエンスグループのCEO。創業10年目の今期は売り上げ580億円を見込み(8月決算)、グループを含めた社員数は800人。古臭いイメージのリユース市場にデジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメーション)をいち早く導入し、リユース業界の革命児と称されている。

 コロナ禍でも攻める姿勢は健在だ。この1年間でアジア、ヨーロッパ、アメリカにブランド買い取り専門店「なんぼや」を10店舗以上オープンさせ、グローバル企業への脱皮を推し進めている。実業家として活躍する嵜本は、「すべて、あの日があったから」と遠くを見やる。

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