■一過性で終わらせない

林:研究の現場では「当たり前を疑う」ことが重要で、そこから発明や発見が生まれます。同質性の中にいては、その視点はなかなか得られません。そういう意味でも大学にとってダイバーシティーは不可欠です。

植木:同感です。ダイバーシティーとは性別だけでなく、国籍や障がい、性的指向なども含みます。多様性を欠いた組織は、柔軟性を欠き脆弱だとも思います。

──ダイバーシティー推進の「具体的な取り組み」は。

植木:4月に「スチューデントダイバーシティ・アクセシビリティ支援室」を開設しました。本学は障がい学生支援に力を入れ、先進校となってきましたが、身体と精神、発達の障がいの窓口は別でした。これを一本化し、多様な性的指向や性自認の相談にも対応できるようにしました。さらに現状の分析や課題の洗い出しをするため「ダイバーシティ推進委員会」も立ち上げました。

林:私は就任して3カ月で、これからいろいろと取り組んでいくところです。これまで2割いる女子学生たちに対するケアが手薄でした。マイノリティーの学生への支援を考えるワーキンググループをまず立ち上げました。加えて、バラバラに行われてきた支援を包括的に考える会議体を作りたいと考えています。

植木:マイノリティーにとって快適な状態は、みんなにとっても快適ですからね。

林:ダイバーシティーはバズワードにもなっていますが、一過性のキャッチフレーズで終わらせてはいけません。グローバル時代に不可避な「社会イノベーション」です。

(構成/編集部・石田かおる)

AERA 2021年6月21日号