植木:私は15年に学部長になりましたが、そのときも「女性初」でした。今は17人いる学部長、研究科長のうち5人が女性です。前例ができたことで、全体の意識が変わったのかもしれません。学部長、研究科長を経験した人たちが副学長になっていく流れがあるので、少しずつ増えていけばと思います。

林:東大には、昨年まで女性の研究科長がいたのですが、今はいません。リーダーシップをとれる女性がきちんとステップを踏み、バトンを渡していけるようにすることも私の仕事なのだなと、今のお話を聞いてあらためて思いました。

■多様性推進は成長戦略

──日本は世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で120位と低迷が続きます。大学が担うべき役割は何でしょうか。

植木:「教育」だと思います。学生や教職員への啓発活動や、学外に大学の専門的知見を発信することが大事かと思います。

林:「教育」という点は私も同感です。今、教養学部の1、2年生に向けた啓発動画の提供を検討しています。加えて、学生たちには日本の外に出て、「ジェンダーギャップ指数120位とはどういうことなのか」、グローバルな視点に立って見てほしい。身をもって知ってほしい、とも思っています。

植木:今はコロナで海外に出ることは難しいですが、国内にいる留学生などと交流することはできます。学生が、自分と異なる文化や価値観に触れることは非常に大事だと思います。最近ではヘイトスピーチやレイシャルハラスメントなども問題になっていますが、その国の人を実際に知れば変わります。

林:国際的な視野を広げることは、多文化共生やダイバーシティーについて考えるきっかけにもなるはずです。

──新体制発足時の重点課題として両大学とも打ち出したのは、「ダイバーシティーの推進」です。その理由は。

林:ダイバーシティーの推進は、教育と研究を高めるための、いわば成長戦略。世界の最先端で勝負するには、優秀な学生が欲しいわけです。ところが、入学してくる学生の男女比はあまりにもアンバランスで、多様な優秀層がきちんと取れているのかという危機感があります。

植木:同志社の創立者・新島襄が残した言葉に「人一人ハ大切ナリ」があり、本学ではその精神が脈々と受け継がれてきました。新島の言葉を現代に置き換えたのが「ダイバーシティー」ではないかと考えています。

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