厚生労働省の人口動態統計によると、2019年の死産数は1万9454。出生数は86万5239なので、2・2%、約50人に1人が死産だ。妊娠22週以降の死産の原因をみると、赤ちゃん自身の病気は2割強。そのほかは常位胎盤早期剥離やへその緒のトラブル、感染症などで、25%は原因不明で、予測がつかず、突発的に起きることが多い。

■誰にでも起こる可能性

 自身も子宮内胎児死亡の経験のある産婦人科医の藤田聡子さん(くすの木レディースクリニック北千住院長)は言う。

「赤ちゃんを亡くし、自分を責めてしまう方はとても多いです。私自身も『もっと健康的な生活を送っていたら助かったのではないか』と思ったことがありました。でも、まず関係ない。誰にでも起こる可能性があります」

 千葉県内の女性(40)は6年前に死産して以来、芸能人が妊娠を公表するたびに「出産まで何が起こるかわからないのに、大丈夫か」と考えるという。

 赤ちゃんを亡くした家族への心の支援を啓発する「Angie」共同代表の小原弘美さん(42)は、自身も41週で死産した経験から、こう話す。

「死産直後は出産後の体力低下もあり、心身の苦しさは壮絶なものでした。そんな時期は、どんな励ましの言葉も傷を深めることが多く、前を向こうとするだけで苦しい。特に、有名であるほどたくさんの言葉をかけられ、苦しさが重なると思います」

 この時期に大切なのは「十分に悲しみ切ること」だという。

「悲嘆と向き合い、受け止めていくためにも、周囲の人は、本人の気持ちに寄り添い、亡くなった子の存在も認めてほしい」

 死産の体の負担は、通常の出産と変わらないが、産後の支援体制は整っていない。赤ちゃんがいないため、保健師による訪問もないなど孤立する。厚労省は今年5月、自治体向けに流産や死産を経験した女性へ適切な施策を講じるよう通達を出した。

「医療者、心理職、福祉職などの専門職や当事者同士、家族・友人など様々な人が付かず離れずそっと見守ることが、その人の生きる力をつなぎ留めてくれると思います」(小原さん)

(文/編集部・深澤友紀)

※AERA 2021年6月21日号から

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