■国民投票の反対は国民主権の否定になる

「(7項目について)よく知りませんが、とにかく憲法を変えることに反対なので、改憲のための国民投票にも反対しています」(主婦)
「改正内容がおかしなものじゃないということはわかっています。だけど、コロナ禍で大変な時に手掛けることじゃないでしょ」(介護職)
「7項目の改正に反対してるんじゃなくて、改正案の中身が不十分だということです。例えば、テレビCMをより厳しく規制することなどを改正案に盛り込むべきです」(大学講師)

 こうした意見に賛同する人は少なくないが、納得し難いこともある。

「改憲に反対だから改憲の国会発議に反対」というのはわかるが、発議を受けて必ず実施される国民投票に反対するのはどうかと思う。改憲の是非を決める最終決定権は主権者である私たちが持っているのに、その権利を否定してはならない。

 そして先の大学講師が言うように、CM規制の強化については、国民投票の公平性を担保するためのルール改善を行う必要がある。

 公職選挙法は選挙運動について厳しい規制を設けているが、国民投票法は賛否を訴える運動を原則自由としている。戸別訪問もできるし、チラシの枚数に制限もない。ただ有料の広告放送には制限を設け、投票日の14日前から投票日までは賛否を訴えて投票を勧誘するCMは放送できない。このルールは、06~07年の憲法調査特別委員会で、日本民間放送連盟(民放連)の代表や「広告批評」主宰者の天野祐吉氏らを参考人に招き、突っ込んだ議論を重ねて定めたものだ。私も参考人として委員会に出席し、諸外国での国民投票取材での経験に基づいて、CM規制の必要性を説いた。その結果、法律制定時は野党側責任者の枝野議員を含め、委員の大半がこのルールに賛成した。

 それがなぜ、いまになって蒸し返されているのか。

 一つに民放連の姿勢がある。先の参考人招致の際は「明確なルールづくりは必要」と発言していたのに、今になって「国民の表現の自由に制約を課すことは、放送事業者の勝手な判断で行うべきではない」ので、量的規制はやらないと言い出した。

 それについて、当時、委員会で野党側の責任者を務めていた枝野幸男氏は、現行の国民投票法は「民放連が量的自主規制をすることを前提に法がつくられたものだ」と主張し、「民放連がテレビ広告の量的な自主規制をするなら法律で規制しなくてもいいが、そうでなければ国民投票法自体が欠陥法だと言わざるをえない」と言い切った(19年5月9日の憲法審査会)。

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