国会前で国民投票法改正案に抗議する人たち/21年5月6日 (c)朝日新聞社
国会前で国民投票法改正案に抗議する人たち/21年5月6日 (c)朝日新聞社
AERA 2021年6月14日号より
AERA 2021年6月14日号より

 憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案の成立を前に、SNSで護憲派の反対ツイートが増えている。「国民投票法」は改憲とどう関係するのか、また反対派は何を理由に反対しているのか。AERA 2021年6月14日号で取り上げた。

【図】憲法改正の手続きはこちら

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 さて、今回の国民投票法改正案と改憲がどう関わってくるのか。それにはまず、改憲手続きについておさらいしておく必要がある。以下に流れをまとめた。結論からいうと、どんなに多くの国会議員が改憲に賛成したとしても、「改憲案を発議する」ことしかできない。改憲の是非は、日本国民一人ひとりが国民投票で決める。

<憲法改正の手続き>(衆院が先に改正の手続きを開始した場合の流れ)
・衆院
政党主体で憲法改正原案をつくる→原案作成に関わった衆院議員が100人以上の賛同を得る→原案を提出→衆院議長 原案を送付、審査を指示→憲法審査会 原案を採決。可決したら送付→衆院本会議 総議員の3分の2以上の賛成で可決
 ↓
・参院
衆院と同じ流れで審査や採決
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憲法改正の国会発議
 ↓
国民投票の実施

 だから、国民投票という制度は極めて重要なのだ。当然ながら、その実施ルール(国民投票法)は、公平かつ合理的なものにしなければならない。

 国民投票法は07年5月に成立し、10年5月に施行された。それでは今回の改正案はどういうものか。

 主なものは7項目あり、以下の表に示した。

<国民投票法改正案の主な内容>
・「投票人名簿の閲覧制度の一本化」
・「出国時申請制度」の創設
・「共通投票所制度」の創設
・「期日前投票」の事由追加・弾力化
・「洋上投票」の対象拡大
・「繰延投票」の期日の告示期限見直し
・投票所への入場可能な子供の範囲拡大

 子ども連れで投票に行く場合、投票所に入れるのは幼児までという現行の規定を18歳未満なら可能と改めるなど、どれをとっても、改憲派に有利な内容とは到底言えない。なのに、これが現行の国民投票法に盛り込まれれば「改憲に道を開くことになる」という護憲派の主張には無理がある。

 にもかかわらず、「国民投票法の改正反対」というツイートが短期間に30万以上なされた。改正案の内容を全く知らない人もいたが、十分に理解した上で許せないという人もいるのだ。

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