しかし、政府が6月20日に緊急事態宣言を解除した場合、7月からの東京五輪・パラリンピックの開催前にリバウンドが起きる可能性も指摘されている。

「集団免疫を獲得するレベルまでワクチン接種が進まない限り、ハンマー&ダンスが繰り返されるのは避けられないと思います。緊急事態宣言をどのタイミングで解除しても、第5波が来るのは確実です」(同)

 移動制限などの強力な対策を「ハンマーを打ち下ろす」ことに例え、それで感染が少し落ち着いたら、感染防止と社会経済活動を両立させていくのをダンスに例えたのが、「ハンマー&ダンス」という言葉だ。

 第5波の主流は未知の変異型に置き換わっている可能性もある。その場合、ワクチンが効かなくなることはないか。インド型に関しては、英イングランド公衆衛生庁がファイザー製の2回接種でも「有効」との検証結果を発表している。佐藤さんも英国で増えている新規感染者は未接種の人たちだと指摘。「問題はワクチン接種が進まない状況での感染拡大」だと言う。

■水際対策の強化を急げ

「流行が長引き、ウイルスが増える機会が増えるほど変異を獲得する機会も増えます。しかもワクチンを接種した人と未接種の人が混在する状態でさまざまな変異株が出てくると、将来ワクチンが効かない変異株が出現する可能性も否定できません」

 変異を抑えるためにも不可欠なのが水際対策の強化だ。

 検疫をすり抜けても国内にウイルスを拡散させないため、政府は入国者に2週間の待機期間を設定している。厚生労働省によると、待機中の入国者は1日あたり2万~2万4千人。外出や人との接触は避け、健康に異常があれば報告を求めているが、行動などの制限は個人裁量に委ねられているのが実態だ。佐藤さんは「今後も世界で変異株の出現は続く」と予言し、こう警鐘を鳴らす。

「ワクチンが効かない変異株は絶対に国内に入れてはいけません。そうしたことも念頭に、水際対策や隔離措置を確実に徹底する体制を早急に築く必要があります」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2021年6月14日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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