■聞いてもらう苦肉の策

 都内在住の女性もこうした子どもの声の利用に不快感を表す。

「子ども=かわいい、大勢の人が受け入れてくれるだろう、というのは、受け取る側の思考を単純化して決めつけている。日本のカルチャーは人を大人扱いしないところがある」

 JR東日本によれば、特に横浜支社管内で同様の取り組みが多いという。

「2015年頃、茅ケ崎駅から始まりました。社員発意や行政からの要望があり、お子様の声に効果があると見込んでいます。アナウンスをしているのは近隣の小学校の児童などで、小学校にお伺いをするなどし収録をしています」(横浜支社の広報担当)

 一方の立川バスは19年12月から始めた試みだという。

 通常は女性の声のアナウンスだが、過去には男性の声にする試みもあった。事前の両替のお願い、車内転倒事故防止のアナウンスなど、呼びかけることは多いが、乗客の注意は薄れてくる。なんとか聞いてほしいという苦肉の策だった。

 乗客からは、「なぜ子どもに注意されなきゃいけない」との意見も寄せられる一方で、「癒やされる」「かわいい」というポジティブな声もあるそうだ。

「両方のご意見がありますが、それも含めて(乗客の耳にアナウンスが)届いているため、車内転倒事故が減少する等の効果があったと捉えています」(立川バス運輸営業部の担当者)

 耳を澄ませてみれば、日本はとにかくアナウンスが多い。

 子どもの声のアナウンス、あなたはどう考えますか?(編集部・高橋有紀)

AERA 2021年6月7日号