エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
メンタル不調は誰にでも起こりうる。コロナ禍でさまざまな活動に制限がかかっている(撮影/写真部・高野楓菜)
メンタル不調は誰にでも起こりうる。コロナ禍でさまざまな活動に制限がかかっている(撮影/写真部・高野楓菜)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 深田恭子さんが適応障害の診断を受けて、芸能活動を休止するそうです。所属事務所によると昨春から不調が出始め、治療を優先するため今年7月期の連続ドラマを降板するとのこと。今は治療に専念してゆっくり休み、元気を取り戻してほしいです。

 メンタル疾患は誰でもなる可能性があるもの。経験した人や、身近な人がなったという人は多いでしょう。私も33歳で不安障害を発症し、今は寛解して症状はありませんが、病気と二人三脚のつもりで生きています。

 昨年からのパンデミックで環境が激変し、もうみんなヘトヘトですよね。雨の季節も憂鬱(ゆううつ)です。緊急事態宣言が延長され、変異株が懸念される中でオリンピックを強行すると聞いて、気持ちがふさがないわけがありません。

 私はオーストラリアの家族と会えず、孤独のあまり「うあああワクチンなんていつ打てるか分からないし、来年になっても家族に会えないかも!」と絶望することも。すると思考がネガティブの沼に落ちて、全ての物事を否定的にしか考えられなくなり、過呼吸ぎみになります。

 そんなときは深呼吸しながら、こう考えています。「どうも私の中には自分をいじめる小鬼が住んでいるぞ。おい、不吉なことばかり耳元で吹き込む小鬼の慶子。あなた一体、何があったの? 話を聞くよ」。するとだんだん、不吉な予言を吹き込む小鬼は大人しくなりました。幼少期などに傷ついた自分を認めてやることが必要だったのかもしれません。

 もしも今、気持ちが沈んでしんどい人は、抱え込まずにカウンセリングを受けるのもいいと思います。私も臨床心理士や精神科医に頼りました。相性のいい先生に出会えるとそれだけで安心します。

 脳も肉体の一部。休養が必要な時は、ゆっくり休むことが第一です。周りは温かく見守ってあげてほしいです。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年6月7日号

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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