だが、経費や費用が明記されていなければ、実態に即した支出かどうかがわからない。公益財団法人として透明性を確保しているとはいえないだろう。

 他にも、運営委託業務にかかる諸経費が延期前後に一部会場で5%増額していることや、繁忙期や閑散期を問わず同額を支払っていることなど疑問は残る。斉木議員は憤る。

「昨年12月に、960億円のコロナ対策費を打ち出しました。選手への毎日のPCR検査やチャーター機での隔離した移動などが発案されたのは、予算を積み上げた後です。膨らんだ費用のつけを払うのは国民です」

■金は山のようにかかる

 コロナ対策費について、布村副事務総長は衆院文科委員会で「960億円を前提として経費の抑制に取り組む」と述べたが、具体的な内訳やかかる費用に関しては言及しなかった。

 この問題を追及してきた作家の本間龍さんはこう指摘する。

「コロナ対策費は国と都で負担すると決めているため、組織委が負担する必要はない。どんどん新しいことをやっていくでしょう。再延期は99%ありえない。残されているのは中止か開催かですが、開催を前提に走り続ける限り、お金は山のようにかかります。五輪開催は国民の命と健康に対する巨大なリスクであることは明らか。開催しなければそのリスクは無くなるのだから、中止するのは当然です」

 だが、元都職員で五輪招致に関わった鈴木知幸氏(国士舘大学客員教授)は「中止はできない」と言う。

「今やめるというのは、100メートル走のスタートラインの位置についたのにやっぱりやめます、というようなもの。報道機関などが中止の声を報じても、IOCのバッハ会長は何も気にしませんよ」

 代々木公園(東京都渋谷区)ではパブリックビューイング(PV)のためのライブサイト設営も進んでいる。東京都オリンピック・パラリンピック準備局の担当者は言う。

「昨年1月には、1日3万5千人の来場者数を想定していましたが、縮小します。大型ビジョン前の観客席も、1600人から710人に減らす予定です」

 PVのほか、競技体験も予定する。飲食を提供するブースもあり、エリアを分けて飛沫(ひまつ)対策を講じるという。政府の五輪「強行」開催の方針に合わせ、準備が進められている。(編集部・福井しほ)

AERA 2021年6月7日号より抜粋

著者プロフィールを見る
福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

福井しほの記事一覧はこちら