AERA 2021年5月31日号より
AERA 2021年5月31日号より

 テレワークの普及で家賃の高い東京に住むメリットはなくなった。とはいえ、いざ移住となれば、子どもがいる人なら子どもの学校のことなどリスクもある。その点、一人暮らしなら自由だ。AERA 2021年5月31日号は「近郊移住」特集。

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 東京からの移住は一人暮らしなら、思い切った決断ができる。

 品川区大崎から多摩西部に移ったのは、映像作家の中嶋優貴さん(26)。フリーランスになって家賃を抑えたいからだった。しばらく実家に戻り、昨年6月に一人暮らしを始めた。

「いまは家賃5万4千円ですが、大崎だと20万はすると思います。会食も減ったので、20万円近く浮かせています。その分を自己投資に充てています」

 朝の日課は、近くを流れる小川のほとりの散歩になった。

「歩きながら今日のタスクを整理すると、頭のなかがスッキリすると気づきました。川のせせらぎを聞くと、疲れていても、なんだかいいなと思えますね」

 都心までJR中央線で1本。打ち合わせはほとんどオンラインだ。都心の雑踏を離れたら、本業にも効果が出たという。

「いろんな人に出会うと、『みんな頑張っている』と思って。自分の軸がぶれることがありました。刺激が強すぎるんです。静かな場所にいた方が、自分のペースでコツコツできます」

■実家で生活費1/4

 IT企業に勤める女性(31)は今年5月、大田区のアパートを引き払い、神奈川県相模原市の実家に戻った。会社がテレワークを認めたためで、地元で暮らすのは8年ぶりだ。

「この年になって戻ると、近所の人から『結婚は?』と心配されていると思いますが、それでも実家暮らしは最強ですよ」

 まず、親孝行ができる。両親は「まさか戻ってくるとは」と喜んでくれた。家には生活費として3万円を入れるが、都内よりも4分の1に節約できる。

「あくまで、東京の給料にしがみつきます。地元にやりたい仕事がないし、事務職だと給料が低くなる可能性がある」

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